日本のアンチエイジング医学の第一人者・満尾正さん。今回のテーマは、日本人の80%が不足している栄養素「ビタミンD」の増やし方。日常の習慣や食事でどのようなことに気を付ければ効率的に増やすことができるのか……。日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。

<満尾正さんプロフィール>
満尾クリニック院長。ハーバード大学で栄養学を習得した日本のアンチエイジング医学の第一人者。1982年、北海道大学医学部卒業。内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、キレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを2002年赤坂に開設、2005年広尾に移転、現在に至る。著書に「食べる投資」アチーブメント社など多数。

ビタミンDは免疫と強い関係あり! 不足すると感染症にかかりやすい

━━前回の「栄養の危ない現状」編で日本人の80%がビタミンD不足だとわかったんですが、ビタミンDが不足するとどんな悪影響があるんでしょうか。

最近の出来事だと、新型コロナウイルスのパンデミックですね。ビタミンDの研究をしているHolick先生らが19万人のアメリカ人を調べて「ビタミンD濃度が低いと新型コロナウイルスに感染しやすい」と発表しています。

━━コロナが流行っていたときに「やっぱり免疫力が大事だよね」という話にはなりましたけど「だからビタミンDとらなきゃ」とはならなかったですね。

そうですね。我々がもっと声を大にして言えばよかったのかもしれません。日本でも昔、慈恵医大の浦島教授らによって「ビタミンDが低いとインフルエンザになりやすかったり、風邪を引きやすかったりする」というデータが発表されているんです。

ビタミンDは「免疫を司る細胞の調整役」といわれていて、免疫が弱くなっているときはサポートしてくれて、免疫が強くなりすぎているときはブレーキをかけてくれます。

免疫は暴れすぎると自己免疫疾患、つまりアレルギーになります。たとえば花粉症も免疫が暴れすぎてる現象の一つです。

だからうちの患者さんでも、ビタミンDを摂ると免疫が調整されて花粉症の症状が楽になる人が数多くいらっしゃいます。

━━私、花粉症歴がすごい長いんですけど、その話も初めて聞きました。

そうなんですか。ビタミンDを試してみる価値はあると思います。症状がゼロにならなくても、夜眠れるようになればそれだけでかなり違いますよね。

うつ病にも関係?! メンタルにも大きな影響を与えるビタミンD

━━免疫低下のほかに、ビタミンDが足りなくなると身体にどんな影響がありますか。

たとえば日照時間が短くなる冬の始まりに、「なんとなく元気が出ない」「暗い気持ちになる」などうつ病のような症状を訴える患者さんが増えてきます。

Holick先生らは、この現象はビタミンDが下がるから起きている現象だとして、「日照時間が短くなる前から積極的にビタミンDを補充しておけばうつ病のような症状にはならないだろう」と述べています。

実際に、北欧やカナダなど緯度が高く冬の日照時間が極端に短くなる国では、国がビタミンDをサプリメントとして摂取することを推奨しています。

実は日本でも昔、ビタミンDを多く含む「肝油(魚類の肝臓から抽出された油)」が給食で出ていました。これは子供たちの健康を守るうえで非常に良いアイデアだったんですね。

感染症予防やメンタル維持のために! 1日30分は直接日に当たろう

━━日本人のビタミンDが不足してる原因は何になりますでしょうか。

まず、日の光を避ける生活をしていること、そして魚を食べなくなってきてること。この2つがビタミンDが低くなってしまってる大きな理由だと思います。

━━私も平日は家と会社の往復で、一番太陽が燦々と輝いてる時間帯にずっと建物の中にいる生活です。

どの方も同じ状況にあると思います。ビタミンDは日光に当たることで皮膚で作られるので、血中のビタミンDの濃度も実は季節によって変動します。日照時間の長い夏は高くて、日照時間の短い冬は低い。

特に1月の半ばから2月にかけて、血中のビタミンD濃度は最も低い値になります。ちょうどその時期はインフルエンザが流行する時期ですよね。

インフルエンザが流行するのは、まず冷たい風にあたることでウイルスと戦う粘膜の白血球の動きが悪くなることが理由です。そして、ビタミンDのレベルが下がってしまうことも流行の大きな原因ではないかと考えられています。

では具体的にどのくらい日に当たれば良いかですが、たとえば夏場は日中に半袖半ズボンで30分ほど日に当たれば、十分なビタミンDができると考えられます。

──外で太陽光を浴びなくても、たとえば日当たりの良い部屋で日光浴をするのはどうでしょう。

残念ながらガラスを1枚通してしまうとUVBは届かないので、直に自然光に当たることが望ましいです。

青魚にきのこ…ビタミンDを多く含む食材で栄養を補給しよう

━━日が短い季節は、日に当たること以外でなんとかビタミンDを補強しないといけないということでしょうか。

おっしゃるとおりです。たとえば、札幌では冬になると当然日照時間が短くなる。ちょうどその頃から鮭が遡上して、石狩鍋で鮭をいっぱい食べます。この習慣はビタミンD補給にもなっていると思いますね。

━━ビタミンDを含んでいる食材って他にどんなものがありますか。

鮭のほかは、青魚ですね。アジ・サバ・イワシ・サンマなどは、ビタミンDを補給するうえで非常に適していると思います。

また、キノコ類にもビタミンDが含まれています。しかし干し椎茸1個あたりに含まれているビタミンDは約20〜30IUぐらいしか含まれていませんので、鮭と同じ分量を食べようとすると干し椎茸を30個、40個食べないといけないです。これは難しいですよね。

━━ビタミンというと熱に弱いんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。

ビタミンDは脂溶性ビタミン(水に溶けにくく、油脂に溶ける性質を持つビタミン)で、熱に関してそんなに心配することはありません。たとえば塩鮭を焼いても相応のビタミンDがとれます。

ビタミンDは大腸がんの再発予防や骨粗しょう症の予防にもつながる

━━ビタミンD不足の、体へのほかの影響っていうのはどんなものが考えられますか。

がんですね。慈恵医大の浦島教授は、大腸がんの再発を予防する目的でビタミンDを補充すべきだと述べておられます。

あとは骨粗しょう症の予防ですね。ビタミンDがないとカルシウムの吸収ができず、骨が脆くなってしまいます。そのため予防目的で積極的にサプリメントなどを活用してビタミンDを補充することをおすすめしています。

ビタミンDのサプリメントは比較的安い! 積極的な活用がおすすめ

━━ビタミンDはそれほど大事なものだということですね。

はい。ビタミンDのサプリメントは、羊毛脂由来の「ラノリン」という、ほぼ無尽蔵にある原料から作られているので、ビタミン単体としては最も安いビタミンです。

━━金銭負担が少ないことも含めて、ビタミンDのサプリメントは積極的にとったほうが良いんですね。ビタミンDのサプリメントってどこでも手に入りますか。

近年は非常に多くの種類のビタミンDがネットで買えるようになりました。1日の摂取量の目安は2000IU(アイユー)、グラムに直すと50μg(マイクログラム)です。この量を目安に取っていただければ十分かなと思います。

━━改めて、ビタミンDをとる方法をまとめるとどうなりますか。

ビタミンDをとる方法は3つしかありません。「日に当たる」か「魚を食べる」か、この2つが嫌な方は「サプリメントを取る」。この3つの方法をぜひ覚えてください。

(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)


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