ハーバード大学で栄養学を習得した、日本のアンチエイジング医学の第一人者・満尾正さんに新常識を解説してもらう「栄養編」。最終回となる第4回のテーマは「血液検査」。どのような項目に注目すれば、自分の栄養のコンディションを正しく知ることができるのか…。日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。

<満尾正さんプロフィール>
満尾クリニック院長。ハーバード大学で栄養学を習得した日本のアンチエイジング医学の第一人者。1982年、北海道大学医学部卒業。内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、キレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを2002年赤坂に開設、2005年広尾に移転、現在に至る。著書に「食べる投資」アチーブメント社など多数。

病気の予防につながる! アンチエイジングドックの血液検査

━━自分がしっかり栄養をとれているかどうか知る方法はあるのでしょうか。

血液検査が一番簡単ですね。海外では「血液データは嘘をつかない」っていう名言があるくらいですから。専門の先生のところで血液検査を受けていただくことをおすすめします。

━━血液検査は、私も会社員なので年に1回必ず受けているんですが…

会社でおこなわれる普通の健康診断は「病気探し」を目的としています。
しかし、当院で行っている「アンチエイジングドック(抗加齢医療の検査)」はもう一歩踏み込んでいて、病気探しだけではなく「病気にならないための防波堤のような要素がちゃんとできているかどうか」をチェックします。

和食中心か洋食中心か…血液検査で普段の食生活が丸わかり!

たとえば血液検査で、動物の油に多く含まれる「オメガ6脂肪酸(アラキドン酸)」と魚の油に多く含まれる「オメガ3脂肪酸(EPA)」の比率をみると、その方の食生活が和食中心なのか洋食中心なのか、傾向がわかります。

オメガ3脂肪酸(EPA)は炎症を抑える働きがあります。一方のオメガ6脂肪酸(アラキドン酸)も、体になくてはならない必須脂肪酸です。

現代人はオメガ6脂肪酸(アラキドン酸)を取り過ぎなんですね。当院でも、オメガ6脂肪酸(アラキドン酸)が不足している人は1人もいませんでした。

━━オメガ3脂肪酸(EPA)は炎症を抑える働きがあるとのことですが、体に炎症が起きるっていうのはどういう状態でしょうか。

たとえば皮膚炎、関節炎、目に見えない血管炎など、身体のどこかで悪いことが起きている状態です。この場合はオメガ3脂肪酸(EPA)を増やしてあげる必要があります。

ぜんそくも、オメガ3脂肪酸(EPA)を増やすことで症状が楽になります。

心臓血管の病気がある人は「ホモシスティン」の値にも注目

さらに血液検査で裏を取れる項目として「ホモシスティン」という値もあります。ホモシスティン値をみると、ビタミンB6・B12・葉酸といったビタミンB群が不足しているかどうか確認することができます。

また、体質的にビタミンB群をうまく使えない人もいるので、ホモシスティン値でそういった体質かどうかもわかります。

━━体質的にビタミンB群をうまく使えない方ってどれくらいいるんでしょうか。

大きな疫学調査ではないので結論は出てないんですが、ある文献によれば日本人の20%、つまり5人に1人がビタミンB群をうまく使えておらずホモシスティン値が上がりやすい体質ではないかといわれています。

具体的なケースとして、心筋梗塞になって一命をとりとめたドクターの話があります。心筋梗塞の危険因子の項目はどこも引っかかってなかったんですが、ホモシスティン値は正常値(11〜12)の2倍以上ありました。

ホモシスティン値が高いと血管が詰まりやすいことは海外の論文でもわかっています。それから、このドクターはビタミンB群をとるようになって、十数年経った今でも心筋梗塞の再発もなく元気に過ごされています。

━━これはホモシスティン値を調べないと心筋梗塞の原因がわからないケースだったんですね。

はい。ですから心臓血管の病気をお持ちの方は、ぜひホモシスティン値を調べていただきたいと思います。

更年期の女性はホルモンを増やす「DHEA」の数値も調べよう

━━ホモシスティン値のほかにも、アンチエイジングドックの検査で調べられる項目はありますか。

男性ホルモンと女性ホルモン、この2つのホルモンの原料になる「DHEA」というものも調べることができます。昔、ご先祖さんから「自然薯(じねんじょ)を食べると元気になる」って話を聞いたことないですか。

━━あります。夏とか「元気がなくなったらとろろを食べようかな」と思いますね。

すばらしいです。自然薯には「ジオスゲニン」という成分が含まれていて、これが体内に入るとDHEAに変わるということが知られています。

自然薯を食べるとDHEAが増えて、男性ホルモンが増えます。さらに女性の体では、男性ホルモンから女性ホルモンが作られます。そのため自分自身のDHEAがどのくらいのレベルなのかは、血液検査で絶対調べた方が良いです。

もし数値が低ければ医療機関からサプリメントでDHEAを補充することができます。サプリメントはヤムイモというお芋の成分からできていて、安全なものです。

特に更年期を過ぎた女性の身体は、ホルモンが枯渇してしまって、骨がボロボロになってしまいます。更年期のトラブルや骨粗鬆症を防ぐ目的でDHEAを調べるのも、非常に大事なことです。

健康診断で問題なかった人もALT(GPT)の数値は一度チェックしよう

━━通常の健康診断でわかる血液検査の結果のなかでも、特に見直したほうが良い項目ってありますか。

まずは「ALT(GPT)」という、肝臓の機能に関する項目ですね。ALT(GPT)の数値は最低でも15以上必要なのですが、ビタミンB群が足りていない方は15に満たないんですね。

日本の医療システムでは、ALT(GPT)の値が高すぎると肝炎と判断されて健康診断で引っかかります。しかし、数値が低すぎる場合は病気とはみなされず、健康診断でも引っかかりません。

ビタミンDの検査は保険対象!「25(OH)D3」のレベルをチェックしよう 

━━日本人の80%が不足しているビタミンDについては、一般的な健康診断では検査できないのでしょうか。

担当の先生にお願いすれば、ビタミンDの血中濃度を調べてもらえる時代にはなったと思います。20年前は非常に高額な検査だったのですが、骨粗鬆症の検査が保険適用になった関係で、現在では負担する金額が安く済みます。

ぜひかかりつけの先生に検査していただくと良いと思います。検査してもらうときは、活性型ビタミンDではなく「25(OH)D3」のレベルを調べてほしい、と伝えるのがおすすめです。

亜鉛不足は最新機械「オリゴスキャン」で血液をとらずに検査できる!

━━前回のお話で亜鉛不足が深刻だとおっしゃっていたんですけど、自分の体内の亜鉛の状態がわかる検査はありますか。

一番良いのは、やはり血液中の亜鉛濃度をみることです。これも保険適用で検査することができますので、ぜひお願いしてみてください。

━━亜鉛の状態を調べるのに血液検査以外の方法はありますか。

オリゴスキャンという最近出てきた面白い機械があります。手のひらに光を当てて、そのデータをインターネットを通じてヨーロッパの本社に送ると、数分以内に結果がPDFで届くんです。

この機械を使うと即座に亜鉛が欠乏しているかどうかがわかるので、血液を取りたくない方はこのような検査を受けてみるのも良いと思います。

━━オリゴスキャンの検査では、ほかにはどんなことがわかるんですか。

栄養素、特に必要なミネラルが足りているかどうかがわかります。偏食がある方、小魚を食べない方、野菜を食べない方は、ミネラル欠乏の場合が非常に多いですね。

ミネラル欠乏になると、集中力がなくなったり情緒不安定になったりなど、メンタルに影響が出てくるんですね。また、お通じの問題につながったりもします。このように、病気ではないんですが、いわゆる「未病」の状態になっている方が多いんですね。

━━オリゴスキャンは、まさにアンチエイジング医学のために欠かせないものですね。

そうですね。積極的な予防医療には欠かせないものになるかなと思います。

栄養は次世代の健康に大きくかかわる! 特にビタミンDは積極的にとろう

━━4回にわたって栄養についてお話を伺ってきましたが、先生が改めて栄養についてお伝えしたいことは何ですか。

やはり、若い女性のビタミンD不足が一番心配です。なぜかというと、我々の次の世代、将来あるお子さんの健康を守るうえで、母体のビタミンD不足は大きく影響を与えているからです。そういう意味でビタミンDだけでもみなさんに注目していただきたいと思います。

(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)


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