日本のアンチエイジング医学の第一人者・満尾正さんは、体の老化を進める二大要因として前回扱った「酸化」と今回から紹介する「糖化」を挙げ、「現代人はみんな糖化に気をつけるべき」と警鐘を鳴らす。体の糖化とは一体何なのか、体の糖化が進むとどんなリスクがあるのか…。日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。
<満尾正さんプロフィール>
満尾クリニック院長。ハーバード大学で栄養学を習得した日本のアンチエイジング医学の第一人者。1982年、北海道大学医学部卒業。内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、キレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを2002年赤坂に開設、2005年広尾に移転、現在に至る。著書に「食べる投資」アチーブメント社など多数。
糖を多く摂ると体がコゲる…体の老化を進める「糖化」とは

━━前回までのテーマ「酸化」に続いて、今回からのテーマは「糖化」なんですね。
はい。老化を進める二大原因が「酸化」と「糖化」です。酸素がないと生きていけないけれど、酸素を吸うと体がサビてしまう。これは必然の結果ですよね。
また、人間は物を食べないと生きていけないのも事実です。しかし、糖とタンパク質が一緒になると体調が悪くなる、ひいては老化現象が進むことが知られています。

糖とタンパク質は、人間の体温ぐらいで放っておくと、メイラード反応といって自然に茶色っぽく変性してくるんですよ。
━━体温で変性するんですか。
はい。たとえば、プリンにかかってるキャラメルソースや美味しそうなホットケーキの色。一般的には「コゲ」といわれますが、これが糖化現象ということになります。
食の発展で糖化が急速に進行!血糖値を上げない習慣が大切

━━酸化がサビで糖化はコゲですか。
はい。ですから、できるだけ普段血糖値が上がらないような工夫が必要になります。
たとえば「食後そのまま寝ない」「急に血糖値を上げるような食べ物・飲み物を大量・頻回に取らない」などですね。こういった習慣をいかに守るかがポイントだと思います。

もともと人類が火も使えなかった頃は、生食、非加熱食品しか食べていませんでした。その頃はほとんど糖化現象が起きていなかったと考えられています。

そのうち火を使って煮炊きをするようになって、農耕が始まって、穀類をいっぱい食べるようになって、糖化現象がどんどん進みました。
そして50〜60年前から急速に、砂糖類などの甘い物が簡単に手に入るようになったので、糖化現象も急速に進んでいると考えられます。
糖化が進むと糖尿病に…ヘモグロビンA1cでわかる体の状態

━━糖と聞くと「血糖値」や「糖尿病」が思い浮かぶのですが、これらも糖化と関係があるんですか。
もちろんです。今、糖尿病の患者さんは5〜6人に1人で、糖尿病予備軍を含めるともっと多いといわれています。
糖尿病になる原因については諸説あるんですが、甘い物の取り過ぎもその原因の一つとして考えられています。

通常の血糖値は大体80〜100で、甘い物を食べると血糖値が急上昇します。健康な方なら食後2時間の血糖値は大体140ぐらいで収まるんですが、糖尿病体質の方は200、ひどい場合は300を超えることもあります。

なぜ糖尿病体質の方がこのように血糖値が高くなるかというと、血糖値をコントロールするホルモンの働き具合があまり良くないからなんですね。
糖尿病かどうかを知るうえで一番良い指標である「ヘモグロビンA1c」という項目を聞いたことがありますか。

これは、血液中のヘモグロビンというタンパク質のうち何%が糖と結びついて糖化タンパクに変性しているかを示す数値です。健康診断でヘモグロビンA1cの値を測ると、自分が糖尿病なのかそうでないのかを知ることができます。
現代人は全員注意しよう!糖尿病になる主な3つの要因

━━ヘモグロビンが少し糖化するだけに留まる場合と、糖化が進んで糖尿病になってしまう場合の違いは何でしょうか。
一つは食習慣ですね。あと、体質も大きいです。やはり糖尿病になりやすい体質の方はいらっしゃいます。
また、運動をするかしないかも関係しますね。食後血糖値を下げるためには運動が非常に効果的です。反対に、なかなか運動ができていない人は糖尿病になりやすいといえます。
━━現代人はみんな、糖化しないように気を付けなきゃいけないですね。
はい。おっしゃるとおりです。
肌トラブルや体の痛みを引き起こす糖化…AGEsの増加が原因

━━体の糖化や糖尿病をちゃんと食い止めるには、まずは体の糖化のメカニズムを知らないといけないですよね。
そうですね。糖とタンパクが一緒になって変性した物を、医学の世界ではAGEs(Advanced Glycation End Products)と呼んでいます。日本語では「終末糖化産物」と訳されます。
このAGEsが一度できてしまうと、元に戻れない、ゼロにはできないといわれています。

━━AGEsができてしまう前に、なんとか糖化の状態を引き戻すことはできるんでしょうか。
引き戻す方法がいくつかあることは、わかってきています。
━━AGEsが増えると体はどうなってしまうんでしょうか。
肌の張りがなくなったり、しわが増えたりと肌のトラブルが増えてしまいます。また、体が硬くなってきたり、体のあちこちが痛くなったりしますね。

━━肌の張りや体の痛み、私もそうです。体がコゲてきているということですよね。怖いです。しかも血管に影響が出るということは、いろいろな病気につながるということですよね。
おっしゃるとおりです。心臓血管病や認知症などの病気ですね。特に認知症は10〜20年でできあがる病気だともいわれています。
BBQや揚げ物はAGEsが多い!食材の加熱温度とAGEsの関係

━━なんとか体の糖化対策をしたいですね。
そうですよね。AGEsが増える原因は、自分自身の体のなかでAGEsが増えてしまう「内因性の原因」と、AGEsを多く含む食べ物を外から取り入れる「外因性の要因」の2つがあります。

━━AGEsを多く含む食べ物があるんですか。
あります。BBQにステーキ、ドーナツ、揚げ物など。美味しそうなものはほとんど、AGEsが多く溜まっている食品です。

食品のAGEsの量を決める要因は「加熱調理の温度」です。刺身や生の物にはAGEsはほとんどありません。
食材を蒸すと95℃程度、煮ると100℃程度、揚げると180℃程度、焼くと300℃以上になって、加熱調理温度が上がれば上がるほどAGEsも増えていきます。

━━美味しい物が本当に多いですね。揚げ物がダメなら、天ぷらもアジフライも食べられないってことですよね。
食べられないのではなく、食べる量と頻度を見直すことが大切です。
血糖値が跳ね上がる「食べ方」もAGEsを増やす要因になる

━━自分自身の体のなかでAGEsが増えてしまう「内因性の原因」とは、どういうものでしょうか。
たとえば、ご飯の前にケーキを食べるといった血糖値を上げてしまう食生活の習慣があると、当然血糖値が跳ね上がります。そうなると内因性のAGEsが増えてしまいます。
━━AGEsを多く含む物を食べるか食べないかじゃなく、食習慣といったイメージでしょうか。
はい。食習慣は大きな影響があります。私の知人の医者は寿司屋で、「握り寿司から食べた場合」と「つまみを食べてから握り寿司を食べた場合」について、血糖値を調べながら食べたそうです。
そうすると、握り寿司から食べた場合のほうが、血糖値がボンと跳ね上がったそうです。

だから糖尿病体質の方にとっては、つまみを先に食べて、締めで握り寿司をいくつか食べるほうが体に優しい食べ方といえます。
━━食べる順番で血糖値の上がり方がそんなに変わるんですか。
はい。ですので、いきなり丼ぶり物をかきこむなど、炭水化物から食べ始めるのは非常に良くない食べ方といえるかもしれません。

━━ということは、忙しい人の食生活は本当に糖化が進んじゃうってことですよね。
その可能性はありますね。
━━自分が糖化しているのかどうかすごく気になる方も多いと思うので、次回は糖化度のチェック方法についてお聞きしたいと思います。
はい、よろしくお願いします。
(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)
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