日本のアンチエイジング医学の第一人者・満尾正さんに体の糖化について解説してもらう本シリーズ。第2回のテーマは「糖化度チェックと隠れ糖尿病」。どのような検査で体の糖化の程度を調べるのか、通常の健康診断では見つかりにくい「隠れ糖尿病」とはいったい何なのか…。日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。

<満尾正さんプロフィール>
満尾クリニック院長。ハーバード大学で栄養学を習得した日本のアンチエイジング医学の第一人者。1982年、北海道大学医学部卒業。内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、キレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを2002年赤坂に開設、2005年広尾に移転、現在に至る。著書に「食べる投資」アチーブメント社など多数。

糖化度チェックは皮膚に光を当てるだけ!老化年齢もわかる

━━先生のクリニックでは、どのように糖化の度合いを調べるのでしょうか。

当院の初診の患者さんに行う検査では、皮膚にどのくらいAGEs(終末糖化産物:体内のタンパク質と糖が結びついて生成される老化物質の1つ)が溜まっているかを調べています。

検査はとても簡単で、腕に光を当てて、光の反射量で皮膚に蓄積されたAGEsの量を計測します。痛くもかゆくもありません。

━━糖化・老化の程度が皮膚でわかるんですね。

はい。AGEsは、光を当てると発光する特性があるんです。だから一瞬で「あなたの皮膚は◯歳」と老化年齢がわかってしまいます。患者さんのなかには、自分の老化年齢を知って非常にがっかりされる方もいますね。

ただ、この検査はちょっと難しいポイントもあります。当院が使っている機械は、腕の柔らかい皮膚に機械で光を当てるんですが、その部分にクリームが塗られていたり日焼けをしていたりすると、検査結果に誤差が出てしまうんです。たとえば、クリームを塗ってるとAGEsの量が多めに出てしまいます。

ですから正確な結果を知るには、AGEs量の測定を受ける2、3日前からクリームなどを塗らないようにする必要があります。

━━そうなんですね。検査の直前にクリームを拭いてしまえば良いのかと思いました。

拭いても簡単に取れない場合があるんです。最近は、指先で測る機械などさまざまな新しい機械が出ているので、身近にそのような機械が使用できる施設があれば、ご利用していただきたいです。

老化年齢が高くても諦めないで!生活の改善で皮膚は生まれ変わる

医師のなかには「AGEsは終末糖化産物だから、一度溜まったら一生抜けない」と考えていて、たとえばAGEs量を測定して100歳程度の老化程度だと判断されたら、一生100歳の皮膚のままと誤解している人がいます。

しかし実際は、そんなことはありません。当院の患者さんでも、メタボで内臓脂肪が多い50代ぐらいの男性がいて、AGEsの値も高めでした。それで非常にショックを受けて一念発起して食事や運動などの生活習慣を見直したんですね。

その結果、内臓脂肪が減って1年後の検査で皮膚年齢がグッと若返っていたんです。その男性はとても喜んでいましたね。このように、皮膚はどんどん生まれ変わっています。

━━よく「肌のターンオーバー」といいますよね。

そういうことです。最初はAGEsが多く溜まった表皮だったのが、若返った表皮に入れ替わっていたと。

糖尿病予備軍の可能性も?!健康診断のHbA1cの数値を見直そう

━━AGEsの検査は、採血したり尿を取ったりする必要がなくて、簡単なんですね。一般的な健康診断では、糖化が進んでいるかどうかチェックできるんでしょうか。

糖化度を調べる血液検査の項目として、「HbA1c(ヘモグロビンA1c)」があります。ヘモグロビンは酸素を運ぶタンパク質で、そのうちの何%が糖化しているかわかる項目がHbA1cです。

━━どのくらいの数値だと気を付けなきゃいけないんでしょうか。

大まかな目安としては、7%以上あると本物の糖尿病が始まっていると考えてください。6〜7%だと糖尿病予備軍で、健康な方は5.5%未満に収まります。

血糖値とインスリン値で糖尿病の発生リスクを推定できる「HOMA-IR指数」

━━先生のクリニックでは、どのような方が糖化の検査をされているんでしょうか。

当院では、糖化のチェックは初診で必ず実施しています。まずは、空腹時の血糖値ですね。これはどこの病院でも検査すると思います。

私がアンチエイジングの世界に入ったとき、師匠から「空腹時のインスリンの値を必ず調べなさい」と教えられました。

インスリンは血糖値を下げるホルモンですが、一方で「老化を進めるホルモン」とも言われているんですね。ですから、空腹時のインスリン値は低ければ低いほど良いと言われてます。

空腹時の血糖値とインスリンから、計算式で「HOMA-IR(インスリン抵抗性指数)」が出ます。HOMA-IR指数が高いほどインスリンが効きにくく、このままいけば糖尿病を発症する可能性が高いと考えられているんですね。このような数値を活用しながら指導やアドバイスをします。

通常の検査でわからない…隠れ糖尿病と呼ばれる「食後高血糖」の怖さ

最近では「1,5-AG」といって、食後高血糖が起きているかを簡単に調べる検査項目もあります。

この1,5-AGの値が低い方は普段高血糖が起きているとわかるんですね。これは隠れ糖尿病ともいえるので、「糖尿病になる前に食生活を見直しましょう、運動の習慣を取り入れましょう」とアドバイスします。

━━隠れ糖尿病というのは、どういう状態なのでしょうか。

空腹時の血糖値は正常範囲であっても、食後に血糖値が急激に上昇して高血糖になる状態を指します。健康な人なら、食後2時間の血糖値は140mg/dL未満に収まるんですが、隠れ糖尿病の人は200mg/dL以上になっている場合があります。

なぜ食後高血糖があると良くないかというと、今まで解説した糖化現象と関係しています。AGEsは血糖値とタンパクが結びついて生成されるので、高血糖の状態が長く続くとAGEsの量が増えてしまい、確実に糖尿病の世界に入っていくと考えられています。

これは通常の血液検査ではあぶり出せないので「隠れ糖尿病」といわれています。隠れ糖尿病に気づくのは難しいのですが、たとえば家族に糖尿病患者がいる場合は糖尿病の発症リスクが高まります。

気になる方は糖尿病の専門医のところに行けば血糖値が上がりやすいのかどうか検査してもらうことができますよ。

糖尿病予防になる!体の糖化を抑えるにはまず食生活を改善

━━糖化のチェックをした後の患者さんは、先生の説明を受けてどんなふうに生活を変えていらっしゃるんですか。

「普段から甘い物をよく食べる」「夜食べる量が多い」「内臓脂肪が多い」という患者さんが多く、お話を聞くとやはり食生活に少し問題があるんですね。また、運動の習慣がほとんどない方もいるので、そういう方には自覚していただくようにしています。

よく「糖尿病予防には、食べ物と運動のどちらが大事ですか」と聞かれるんですが、食べる習慣のほうが絶対に大事です。運動は、だんだんしなくなる方が多いですし。

━━そうですね。運動の習慣を変えるのはけっこう難しいかもしれないですね。

そうなんです。しかし「何も食べない」ということは絶対ありませんよね。だから「何をどのように食べるか」という食生活を改善するほうが重要だと患者さんにお話しています。

指でAGEsの値を測れる機械が全国設置!自分の糖化度を調べてみよう

━━指でAGEsの量を測れる機械が、8月中旬からフィットネスクラブ「ティップネス」に全国的に置かれているので、気になる方は調べてみてほしいですね。

はい。AGEsの数値を下げることも運動の目標の一つになるのではないかと思います。

━━運動できる人は、やっぱり積極的に運動したほうが良いんですよね。

もちろんです。

━━次回は「糖化が引き起こす老化と病気」についてくわしく特集していきたいと思います。

(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)


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