日本の腸内環境研究の第一人者・内藤裕二さんに、最新研究に基づく腸の新常識を伺う「人生が変わる!腸と腸活」シリーズ。第5回は、自分の腸の状態を知る方法を掘り下げる。内藤さんが提唱する「腸年齢チェックリスト」も紹介。リストの作成に込められた熱い思いを、日本テレビホールディングス・古市幸子が取材した。

<内藤裕二さんプロフィール>
日本の腸内環境研究の第一人者。京都府立医科大学大学教授。1983年京都府立医科大学卒業、2001年に渡米しルイジアナ州立大学医学部分子細胞生理学教室客員教授に。帰国後、2005年独立行政法人科学技術振興機構科学技術振興調整費研究領域主幹、2009年京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学准教授、2015年同大学附属病院内視鏡・超音波診療部部長、2021年から現職。著書に「消化管(おなか)は泣いています」ダイヤモンド社など多数。

Q.自分の腸の状態が良いか悪いか、知る方法は? 

━━20代から60代の全世代のスタッフから、腸の状態に関する質問です。「自分の腸の状態が知りたいです。腸の状態が良いか悪いかわかる方法はありますか。」

明日からでもできるのは、毎日自分の便を眺めて、量・色・質を確認すること。便の形状や硬さを7段階に分類した国際的な指標「ブリストルスケール」というのもあります。せっかく水に流してしまうのであれば、自分の体調管理を考えて便を眺める方法が1番簡単ですね。

また、便は形や色も大事なんですが、匂いも重要です。匂いは腸内環境を反映しています。食物繊維で出てくる発酵性のガスは漬物みたいなもので、肉の匂いが入っていなくて臭くないんです。

━━たしかに、赤ちゃんの便とか臭くないですね。

そうですよね。実はTOTOから便の形を自動分析するトイレが発売されるんですが、来年(2026年)にはそのトイレに匂いセンサーが付く可能性があります。ちなみに、匂いセンサー付きトイレの1号機は京都府立医科大学にすでに設置されています。

理想的な便の状態は「濃い茶色」で「バナナ2本分」

━━便の見た目や量、形については、どのような状態が理想的でしょうか。

色は、胆汁酸の作用で生じる「濃い茶色」が理想です。便は長く腸内に停滞する時間が長くなればなるほど変化を受けて黒くなっていきます。形と量は「バナナ2本分ぐらい」が良いといわれていますね。

日本人は、便がスッキリ出ることにこだわるといわれています。実際にこういう研究をした人がいるんですね。ちょっとでも便が硬かったり柔らかかったりすると、日本人は嫌いらしくて。

━━これは日本人特有なんですか。

日本人特有なんですよ。ブリストルスケールでも日本人は「4じゃないと嫌」と考える傾向があります。外国の人は「3でも5でも良いじゃないか」と言うんですけどね。

自分の腸内細菌がわかる「便の簡易検査キット」もある!

━━意外なところで日本人の特性がわかりましたね。最近は便の簡易検査ができるものも出てきているそうですが、これは効果的なんでしょうか。

はい。私たちが持っているデータベースをもとに腸内細菌を分類する検査キットを作ったんですが、これはすでにベンチャー企業が発売しています。現状、自分自身の腸内細菌を知るという観点では有用だと思っていますね。

たとえば「ビフィズス菌がいないんだ」「酪酸菌は結構いる」など、データでみると安心感があったり、次の行動変容に繋がったりします。ちなみに、この検査キットは大阪府・枚方市のふるさと納税の返礼品なので、枚方市以外の人はふるさと納税で入手できますよ。

Q.健康診断のどの数値を見れば自分の腸の状態がわかる?

━━続いて40代の女性からの質問です。「一般的な健康診断で、何の数値を見れば自分の腸の状態がわかりますか。」

私たちも、人間ドックをおこなっている人たちとタイアップして「AIを使って解析すればもっと早く見つけることができるんじゃないか?」と思って取り組みました。

しかし残念ながら、現状の人間ドックで行われている検査で、我々の将来を予測することはできません。

今では、腸内細菌の検査だけでなくホルモンの検査など、少し特殊な検査も新しく出てきています。決して「こういった専門的な検査をしろ」とまでは言いませんが、現状の人間ドックだけで満足していると痛い目にあうこともあります。

日本女性の死因第1位が大腸がん…50歳以上は検診を受けよう

日本では今、女性の死因の1位が大腸がんで、アメリカの人よりも大腸がんが多くなっている状態です。

お腹の症状がひょっとすると危険なサインである可能性もあるので、50歳以上の方は必ず一度大腸がん検診を受けることが、これから日本では絶対的に必要です。

━━なぜ日本人の女性に大腸がんが多いのでしょうか。

わからないですね。これは日本人だけなんです。乳がんが多いのも日本人だけなんですね。遺伝が原因でもないんですよ。海外ではよく「乳がんのブローカー遺伝子」についていわれていますけど、これも日本にはほとんどありません。

日本では、がんで亡くなる方がたくさんいる現状があるので、やはりリスク診断をしながら検診をしておくことはとても重要です。

大腸に関しては、毎年検査をする必要はありません。5年とか、アメリカでは10年に1度でも良いんじゃないかといわれています。

がん検診は今、ちゃんとやっている人とやってない人の差があまりに大きすぎる。日本全体としてはがんが増えていってしまってるので、ぜひ気を付けてほしいと思います。

Q.先生が提唱されている「腸年齢チェック」とは?

━━続いて20代の女性からの質問です。「先生は腸年齢チェックを提唱していらっしゃいますが、どのようなものか教えてください。」

腸年齢チェックは、私たちの研究データと世界の研究データを合わせて「腸年齢が若くなる要因」と「腸年齢が進んでいく要因」をチェック項目として挙げているものです。

自分の年齢から「腸年齢が若くなる要因」の数を引いて、「腸年齢が進んでいく要因」の数を加えると、自分の腸年齢がわかります。一般の方にも私たちの思いをわかってもらって行動変容に移れるようにと、2年ぐらい前に作りました。

━━具体的にどんなチェック項目があるか教えていただけますか。

まずは、腸年齢が若くなるリストから。これが1個でもあると、腸が若返っていきます。

━━私、結構腸年齢が若いかもしれません。

では逆に、腸年齢が進んでしまうリストを紹介します。

━━これに結構当てはまっちゃうと、体が老化していくんですか。

このリストはまだしっかり検証できていませんから、必ず体が老化するわけじゃないですよ。しかしリストの1個1個の項目には、深い意味があるんです。それだけでも1時間ぐらい喋れるぐらい。

たとえば、田舎育ちはなぜ良いのかというチェック項目。腸内細菌のことを考えると、都会のマンションで育った子どもより、北海道の牧場で育った子どもの方が腸内細菌が多様で量も多く、アレルギーにもなりにくいとわかってきているんです。

みんなの行動変容につなげたい!腸年齢チェックに込められた思い 

━━先生は、今後どんな社会になったら良いとお考えでしょうか。

腸内細菌について研究したり腸内細菌に関与する食品について調べたりするなかで今思っていることは、どうすれば私の熱い思いが皆さんに伝わるのかということ。

私が一生懸命喋っているだけでは伝わらない。行動変容を起こすためには「生きがいを持つ」「収入がある程度増える」などいろいろな条件が必要で、結局そういうことをやっていかないと皆さんが幸せになれないとつくづく思っています。

だから「もう医者をやっている場合じゃない」と思って、より世間に出て、いろいろなことをしてみたいと思っている今日この頃です。

━━腸年齢チェックは、そういう先生の熱い思いが込められたものなんですね。

(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)


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