10歳若返ったような体力が得られるとして世界が注目する画期的なウォーキング法「インターバル速歩」。第一人者である能勢さんは「体力アップ以外にも、生活習慣病・関節痛・認知機能・不眠・骨密度などの改善が期待できる」と語る。歩くというシンプルな運動方法でなぜこのような効果が得られるのか、実際にどれくらい健康状態が改善されるのか…。日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。
<能勢博さんプロフィール>
インターバル速歩の第一人者。信州大学医学部特任教授。1979年、京都府立医科大学医学部卒業。同大学助手を経て1985年に米国イエール大学医学部へ留学し博士研究員を務め、1993年から京都府立医科大学で助教授として勤務。1995年より信州大学で教授として加齢適応・スポーツ医科学分野を牽引し、現在に至る。
血圧10低下!? 生活習慣病の改善につながるインターバル速歩

━━体力がアップする点がインターバル速歩の大きな効果の1つだと思いますが、それ以外にもいろいろな効果があるんですよね。
はい、まずは生活習慣病ですね。高血圧・高血糖・肥満などの生活習慣病の症状が改善した実績があります。
━━数字として結果が出ているんでしょうか。
そのとおりです。たとえば血圧について言いますと、インターバル速歩を5か月間すると上の血圧が10mmHg、下の血圧が5mmHg落ちます。

下の血圧が5mmHg落ちると、今後5年間に心筋梗塞や脳梗塞などの発作が起きる確率が40%下がると言われてるんです。
良い姿勢で歩くインターバル速歩は関節痛の軽減にも効果あり

さらに、インターバル速歩は慢性の関節痛にも改善効果が期待できます。
━━関節が痛くなったら「歩くのやめようかな」と考える方が多いと思います。
腰や膝に痛みがある人は、いつも同じ姿勢で生活しているケースが多いです。たとえばデスクワークの多い人だったら前屈みで生活していたり、農家の人だったら同じ体勢で草むしりや収穫をしていたりしますよね。
インターバル速歩のように姿勢を正して大股で歩くことを、日常生活の中でしていない。

━━では、痛みのある腰や膝の部分を強化して治すというより、インターバル速歩でほかを動かしている間に回復させるということですか。
はい。整形外科の先生もそうおっしゃっています。
インターバル速歩で痛みの「思い込み回路」も断ち切ろう

ペインクリニック(痛みを専門的に治療する診療科)をやっている先生は「思い込み回路の切断が大切だ」と言っています。思い込み回路というのは「〇〇をしたら痛みが悪化する」と考える思考回路のことです。

━━脳の思い込み回路が痛みを作っているってことですか。
はい。たとえば子どもが転んだときに「痛いの痛いの飛んでいけ」って言いますよね。これは、要するに脳の思い込み回路を切断してるんですよ。だから「絶対痛いに違いない」と思っているところを、インターバル速歩で「あれ、今日は痛くなかったよな」と学習させていくんです。
インターバル速歩で体を疲れさせると不眠症改善にもつながる

━━私は深い睡眠がとれないことが悩みなのですが、不眠についてもインターバル速歩は有効ですか。
有効です。実は(中高年の)約20%の人が、様々なネガティブ感情が出てくる気分障害と診断されます。それで話を聞いてみると、寝られない人がすごく多い。そういう人には「騙されたと思ってインターバル速歩をやってみて」と言います。

━━不眠にもインターバル速歩は良いんですか。
はい。気分障害(=ネガティブ感情)を抱える20%の人も、インターバル速歩を続ければ正常の範囲に行くことが期待できます。
━━不眠の原因にはいろいろあると思うんですけども、どんな原因であっても、歩いたら良くなるんでしょうか。
「ややきつい運動をすれば不眠は治る」というのが僕らの見解です。インターバル速歩をしたら、夜中目が覚めそうになっても体が疲れていて眠くて、余計なことを考えないようになるんですね。
だから、インターバル速歩をやることによって寝られるようになって、好循環が生まれるというわけです。

━━これまでの話を振り返ると、すごくおおざっぱに考えたら「インターバル速歩で筋肉をつければいろいろな病気の予防になる」ってことですよね。
そのとおりなんです。加齢性の筋量減少症を防ぎさえすれば、ほとんどの病気にかからなくて済むと考えています。
軽度認知障害が改善!?ややきつい運動は認知機能にも影響

━━インターバル速歩は、血圧・血糖値・睡眠のほかにどんなものに効果がありますか。
認知機能の改善も期待できます。たとえばアルツハイマー病になってかなり重症化した人が医療機関でややきつい運動をした結果、認知機能が改善したという報告が論文で出ています。

━━すでに認知症の症状が出ている人たちの状態も良くなるんでしょうか。
良くなると考えています。私たちの経験を話すと、秋田県の由利本荘市で65歳以上の男女200人に、インターバル速歩をしてもらいました。一般的に、65歳以上の人100人のうち約20%は軽度認知障害(MCI)になっているんですが、軽度認知障害は運動処方が効きやすいレベルなんですね。

軽度認知障害がある人たちにインターバル速歩をしてもらうと、体力が約6%上がって、認知機能が34%改善する。その結果、本格的な認知症になることを止めることができると期待されています。
5か月間で1〜2%上昇!? インターバル速歩で骨密度もアップ

閉経後の女性は「骨密度」が健康上の問題になることもありますが、インターバル速歩は、骨密度アップにもつながると考えられています。
━━骨密度の問題は、本当に切実ですね。
そうですね。閉経後10年で骨密度は約2%落ちるとされています。

それがインターバル速歩をすると、「脊柱」と一番折れやすい「大腿骨頸部」の骨密度が、5か月間で1〜2%ぐらい上がるんです。5か月間で5歳ぐらい若返った骨密度が得られる可能性があります。

━━インターバル速歩をすると、骨密度が「減らない」じゃなくて「アップする」んですね。
はい、アップするんです。
遠隔で測定!インターバル速歩の効果を裏付ける研究システム

━━インターバル速歩はいろいろな効果が出ているんですけど、それぞれ検証が行われてきたわけですよね。
そのとおりです。私たちが作り上げた「遠隔型個別運動処方システム」を使って、5〜6か月間かけて効果を検証しました。具体的には、3軸の加速度計と気圧計が入っている「携帯型カロリー計」を活用しました。

携帯型カロリー計があれば、好きなとき・好きな場所でインターバル速歩をしても、最大体力の60〜70%でやっているかどうかを全部モニターできるんです。

この携帯型カロリー計とインターネットを組み合わせて、自動的に全部のデータがサーバーに残るような研究システムを作り上げたわけです。
社会を元気に!インターバル速歩で目指す「医療費20%削減」

━━これだけ効果が出るインターバル速歩をみんながやるようになったら、社会的にも大きな影響が出そうですね。
そのとおりです。インターバル速歩の最終目標は何かというと「医療費の抑制」なんです。
現在は、一般会計予算が約110兆円で、その半分に相当するお金が医療費にかかっている状況です。それがインターバル速歩をすると、病気にかからなくなる・医療機関にかからなくなる・薬が必要なくなるなどの効果が出て、結果的に20%程度の医療費が削減できると期待しています。

インターバル速歩には医療費の話を含めた「20%の法則」があるんです。インターバル速歩を5か月間したら体力が最大で20%向上して、その結果、高血圧・高血糖などの生活習慣病や加齢性疾患も20%改善するという法則です。

━━自分の健康を守るだけじゃなく、周りの人も含めて安心できる生活をしようと思ったら、みんなで歩いた方が良いということになりますね。
そのとおりです。
━━次回は、インターバル速歩に関する素朴な疑問について先生に答えていただきたいと思います。次回もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)
『コンディショニングイノベーションLab公式』は日本テレビホールディングスのウェルネス情報シンクタンク、コンディショニングイノベーションLAB(CIL)公式YouTubeチャンネルです。「健康を、正しく、わかりやすく」をテーマに、最新のウェルネス情報からベーシックな基礎知識までエビデンスに基づいた情報をお届け。日々を健やかに、人生を楽しむお手伝いをいたします。



