10歳若返ったような体力が得られるとして世界が注目する画期的なウォーキング法「インターバル速歩」。週60分の速歩きが推奨されているが、関節を痛めるリスクはないのか…。また、三日坊主にならないためにはどうしたら良いのか…。インターバル速歩に関して寄せられたさまざまな質問について、日本テレビホールディングス・古市幸子が考案者の能勢博さんにインタビューした。
<能勢博さんプロフィール>
インターバル速歩の第一人者。信州大学医学部特任教授。1979年、京都府立医科大学医学部卒業。同大学助手を経て1985年に米国イエール大学医学部へ留学し博士研究員を務め、1993年から京都府立医科大学で助教授として勤務。1995年より信州大学で教授として加齢適応・スポーツ医科学分野を牽引し、現在に至る。
Q.インターバル速歩にリスクはないのですか?

━━まず1つ目は、「インターバル速歩のリスクはないのですか」という質問です。
関節が痛くなるんじゃないかと心配になりますよね。ところが結果から言うと、だいたい半分の人が関節痛が良くなって、ほぼ半分の人は変わらないんですね。悪くなるのは全体の4%ぐらいです。
━━インターバル速歩で関節の痛みが良くなるんですか。先生が今まで検証されてきたなかではそのような結果になっているんですね。
はい。実は膝痛や腰痛などの慢性関節痛に関する整形外科学会の方針では、治療の第一選択が「速歩」になっているんです。

━━速歩は治療の選択肢にもなっているんですね。
そうなんです。インターバル速歩によって、姿勢が良くなったり、今まで使っていなかった関節が体重を支えたりといったことが起こってきますから。
━━「関節が痛くなるのが怖い」という意識を変えるには、きっかけが必要なのではと思います。
そうですね。そこで私たちがよく勧めているのが「ポールウォーキング」です。

日々のウォーキングで「途中で足が痛くなって動けなくなるんじゃないか」と不安に思うこともありますよね。
だけどポールさえ持っていれば、なんとか家に帰れる。これが安心材料になるんですよね。このポールウォーキングでインターバル速歩を続けている方もいます。それでも不安だという人には「水中ウォーキング」を勧めていますね。

水中ではほとんど体の重力が膝にかかりませんから。それに水の抵抗がある分、筋肉がすごくつきやすいんですね。だからまず水中ウォーキングをやってから、陸上のインターバル速歩に移ってもらう。こういう指導もしています。大事なのは、「痛い」を理由にウォーキングをやめないことです。

筋肉は使わないとどんどん萎縮していきます。これを止めるためには、多少痛みがあっても、症状が悪化しない範囲で歩いた方が良いです。

症状が悪化するようであれば、歩くスピードを落としたり歩く頻度を落としたりして、自分で適度な運動量を見つけようと指導しています。
Q.5セット・週4回が基準だけど週末にまとめてやっても良い?

━━続いての質問です。「ゆっくり歩き3分・速歩き3分×5セット、これを週に最低4回やるのが基準となっていますが、週末にまとめてやっても効果はありますか」。
1週間分をまとめてやっても良いです。1週間単位の速歩の合計時間に絞って効果を解析したデータがあるのですが、速歩時間に応じて効果が現れています。
━━ゆっくり歩くだけだと効果が出ないんですね。
はい。そして、速歩時間が伸びればその分効果が出るかという点ですが、速歩の合計時間が週60分のところで効果はほぼ平行(頭打ち)になるんです。つまり、週60分以上歩いても効果は得られないんですね。

━━では、1週間分を溜めて歩いても大丈夫なんですね。
そのとおりです。溜めてやっても良いし、バラバラにしても良いです。たとえば、朝5分・昼5分・夕方5分速歩をする。この1日15分のセットを週4日やれば、速歩の合計時間が週60分になりますよね。
Q.運動強度の「最大体力の70%」は何を目安にすれば良い?

━━続いての質問は「最大体力の70%の速歩きとは、何を目安にすれば良いですか」です。
主観的な運動強度でいうと、たとえば階段を駆け上がって膝に手をついて、吐き気まで感じる。これが最大の運動強度です。そこまでの強度ではなくて、友達と軽い会話ができるぐらいのスピードで歩いて、5分ぐらいすると汗ばんでくる。この程度が70%と考えてもらったら良いと思います。

━━じゃあ、インターバル速歩の早歩きのターンでは「3分間同じスピードで歩き続けるのが結構大変」と思うくらいの強度が良いってことですか。
そのとおりです。2分ぐらい歩いて「もう嫌だ」と感じるぐらいがいいです。
Q.雨の日や暑い日に室内でできる代替方法は?

━━続いての質問は「雨の日や暑い日に室内でできる、インターバル速歩の代替方法はありますか」です。
私が勧めているのはスクワットです。自重負荷の筋トレぐらいはやっておいた方がいいかもしれませんね。ややきついと感じるぐらいの頻度で。
Q.高齢でもできる? 基礎疾患があってもできる?

━━続いては「高齢者や基礎疾患があってもできますか」という質問です。
当然できます。高齢であったり基礎疾患があったりして何か事故が起こった事例は、ほとんどありません。
━━それぞれの皆さんのペースで、70%の力で歩く形ですもんね。
はい。ランニングと違ってウォーキングは動作が比較的ゆっくりで、自分の体の動きに対してフィードバックをしやすいんですよね。誰かと競争もしないので「無理をしない」という意識を持ちやすい運動だと思います。
Q.インターバル速歩は血圧が低い人にも効果がある?

━━続いての質問は「血圧が低い人にもインターバル速歩の効果はありますか」です。
はい。インターバル速歩で代謝が上がってくると血圧も二次的に上がってくるんですよね。
━━前回までの話では「血圧が高い人はインターバル速歩をすることで血圧が下がる」ということでしたが、血圧が低い場合はインターバル速歩で血圧が上がる効果があるというのは、どういうことなのでしょうか。
血圧が低いというのは、基本的に代謝が低いんです。心臓が血液を送り出せなくなって、代謝レベルよりも低くなって低血圧になるんですね。

だから、安静時の基礎代謝量を上げてやればいいんです。そして安静時の代謝は、筋肉が司っている。運動によってついた筋肉は、運動をしていないときでも、いつでも動けるようにアイドリングしています。それで基礎代謝が上がってきて、血圧も正常に戻っていきます。
Q.食事・栄養面で気をつけることはありますか?

━━続いては「食事・栄養面で気をつけることはありますか」という質問です。
タイミングですね。インターバル速歩のようにややきつい運動をすると、筋肉のなかのグリコーゲン、いわゆるブドウ糖を使います。運動終了後30分〜1時間ぐらいは、筋肉が血液中からブドウ糖をたくさん取り込もうとするので、その間に栄養を摂取すると筋肉のなかに効率良くブドウ糖が入っていきます。

━━運動したあとの1時間ってとても大事なんですね。
とても大事です。スポーツ栄養学の分野では運動後1時間が「ゴールデンタイム」と言われています。このとき、ブドウ糖と一緒に「アミノ酸」も取り込まれていくんです。ややきつい運動をすると筋肉が炎症を起こすんですが、アミノ酸が筋肉に入るとそれが効率よく修復されます。

さらに、主に肝臓で作られる「アルブミン」というタンパク質があるのですが、アルブミンの合成も活性化します。

アルブミンは外から水を吸い込むので、血液量が増えるんです。血液量の増加は、酸素を筋肉にたくさん運ぶ効果や、筋肉からできた熱を体の外に出して汗をかきやすくなる効果があります。
━━積極的に摂った方が良い栄養素や食品はありますか。
牛乳ですね。牛乳のなかには「乳糖」という糖分が含まれています。また「乳タンパク質」という、消化されやすい良質なタンパク質もあります。

━━牛乳なら運動直後でも体に入れやすくて良いですね。
そうですね。
Q.速歩きが苦手でつい走っちゃう人はどう取り組めば良い?

━━私は大股で歩いたり速く歩いたりするのが苦手で、急いでいるときはすぐ走っちゃうんです。こういう人はインターバル速歩にどう取り組んだら良いですか。
そういう人は走ったら良いんですよ。ただ、すぐ走るのを止めないことが大切です。2分以上走ったときに「もう走るの嫌だな」となるぐらいの運動強度で、ちゃんと3分以上走ってください。
Q.三日坊主にならないように続けるコツは?

━━最後の質問は「三日坊主にならずインターバル速歩を続けるコツはありますか」です。
これは大問題ですよね。解決方法は3つあります。1つ目は、何分で歩けたかなど自分の努力を記録して「自己比較」をすることです。「自分の努力の見える化」とも言いますね。
同じコースを歩いていたら、だんだん時間が短縮して「体力がついてきたな」となります。これを記録しておけば、「このまま努力していたらもっと自分の未来は良くなるだろう」と思うのが大体人間の習性ですから。
2番目の解決方法は、自分がくじけそうになったときに励ましてくれるような「ライバル」を作ることです。一番いいのは配偶者ですね。

配偶者と「今日歩いてきたよ」「今日は行かないの?」といった会話になると、「じゃあ行こうかな」と思えますよね。
そして3つ目は「仲間作り」です。仲間と一緒に歩いていると「他人に迷惑かけたくない」と思う。こういう気持ちがモチベーションにつながります。こういう仲間を作るのはとても大事ですよ。

━━先生も歩きたくないときがあるんですか。
そうですね。いつも元気っていうことはなくて、浮き沈みがありますよね。人の悪口を言ったりネガティブに心が動いたりするときは「トレーニングが足りない」と思ってやっていますね。

━━「自分の調子が悪いのは、最近歩けてないからなんじゃないか」と思えるようになると、大きな進歩ですね。先生、いろいろ教えていただきありがとうございました。
ありがとうございました。
(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)
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