これまで3回にわたり、運動免疫学の世界的権威・鈴木克彦さんに免疫の仕組みや生活習慣との関連性を教わった。4回目となる今回は、免疫に関する素朴な疑問を解消する。花粉症と免疫には関係があるのか、免疫力が高い人・低い人にはどんな特徴があるのか……。スタッフから寄せられた免疫に関するさまざまな疑問について、日本テレビホールディングス・古市幸子が鈴木さんに質問した。
<鈴木克彦さんプロフィール>
運動免疫学の世界的権威。早稲田大学スポーツ科学学術院教授。早稲田大学大学院人間科学研究科生命科学専攻修士課程修了後、弘前大学医学部を卒業し、国立国際医療センター病院にて臨床研修修了。2002年弘前大学医学部助手、2003年早稲田大学人間科学部専任講師、2008年同スポーツ科学学術院准教授を経て2013年より現職。
Q.花粉症になる人とならない人…免疫と何か関係がある?

━━スタッフからもっとも多く寄せられた質問です。「花粉症になる人とならない人がいますが、免疫と関係があるんでしょうか」。
免疫には本来、外部から侵入してきた病原体など、体にとって有害なものを排除する役割があります。しかし、有害ではない花粉にも過剰に反応してしまうのが、花粉症の仕組みです。
その意味で、過剰な反応を抑えてやることが大事なんですね。実際に花粉症の治療でも、ステロイドの吸入を使うなどして免疫を抑制することもあります。花粉は鼻から入ってくるので、マスクなどで防御して花粉を摂取しないようにすることも大切です。

また、運動不足の人は炎症が出やすいので、運動を長期間続けていくと抗炎症作用によって過剰な反応が落ち着いてくることがあります。室内でも運動はできますので、花粉を吸わないように気をつけながら体を動かすのが良いと思います。

━━花粉症についても過去の回で教えていただいたように、免疫力を上げるのと同じ対処法で効果が出てくることもあるということですね。
人によっては期待できると思います。しかし、効果が出ない・悪化する可能性もあるので、少しやってみて考えていただくのがよろしいと思います。
Q.年齢とともに免疫力は落ちる?何歳から急激に落ちる?

━━続きまして30代男性からの質問です。「年齢とともに免疫力は落ちますか」。
50代以降は免疫力が低下して感染に弱くなります。そのため、ワクチンを打つなどして感染に備えていただくことが重要になると思います。
そしてお伝えしておきたいのが「生活習慣病は免疫力を下げる」ということです。生活習慣病は40代以降で増えてきますが、これらは免疫系にとっては良くないですね。
生活習慣病が発症しないように、食べ過ぎを防いだり適当な運動をしてエネルギーを消費したりすることが良いと思います。

━━まずは生活習慣病にならないような生活をすることが大事なんですね。
そうですね。働き盛りで疲労を抱えて、ストレスで免疫力が低下するということもあります。うまくストレスマネジメントをしていただいて、免疫力を落とさないようにしていただくことが大事です。

もし今「風邪をひきやすい」と感じている場合、それは免疫力が低下している表れでもあると思います。そういう方は特に気を付けていただいて、生活習慣を見直していただくことが大事です。
Q.1年のなかでもっとも免疫力が落ちる時期はいつ?

━━続いては20代の女性からです。「1年でもっとも免疫力が落ちる時期・高まる時期はいつですか」。
免疫系は冬に高まります。抗体の量を実際に測定すると冬は量が多いんです。つまり冬場の方が感染症に対する準備がちゃんとできているといえます。
しかし冬はそれ以上にいろいろな感染症がありますので、免疫が高まっていても対応できないんですね。

━━では、反対に免疫力が落ちるのは暑い夏となりますか。
抗体の量は、夏が少ないですね。夏は一部の感染症はありますが、あまり病原体がいないので免疫の出番が多くなく、抗体の量も下がっています。
━━しかし最近は、夏に気になる感染症もありますよね。
はい。たとえば百日咳やコロナなど、今まで夏以外に出ていた感染症が、夏場に流行するようになりました。これはもしかすると、今の現代人の免疫力が下がってきている可能性があるのかもしれません。

また、コロナの最中はマスクや手洗い、うがいなどの衛生対策をきちんとおこなっていましたが、最近はそうでもなくなってきましたよね。そのなかでいろいろな病原体がやってきて、体がすぐ反応できずに感染症になってしまうという背景もあるのかもしれません。
━━今後もコロナ以外にもいろいろな菌が新たに出てくるかもしれませんよね。感染症対策や免疫力アップを日々心がけたいですね。
Q.免疫力が高い・低い人の特徴は?体温は関係がある?

━━続いては30代の女性からです。「免疫力が高い人・低い人の特徴があれば教えてください。体温が高い・低いなどは関係ありますか」。
体温はそれほどダイレクトに影響するわけではありませんが、たしかに冷え性の人で血の巡りが悪ければ、免疫系の細胞が体のなかを巡る機会が少なくなります。そのため、冬場に体を温めるように気を付けていただくことは必要かと思います。

━━では、どちらかというと体温が高めの人の方が免疫力は高いということになりますか。
体温が高いということは代謝が良いということなので、そういった意味で免疫は働きやすいです。また、脂肪をエネルギーとして使ってくれるので、生活習慣の予防としても良いことではあります。
しかし、いつも37度を超えているような人はエネルギーを消耗してしまう可能性もあるので、気を付けていただいた方がいいのかもしれません。
━━体温以外で、免疫力が高い人・低い人の特徴はありますか。
たとえばアスリートでいうと、筋骨隆々で体力がありそうに見えても頻繁に風邪をひく人がいます。これはトレーニングのやりすぎで疲労が溜まっているのが一つの理由になると思います。

トレーニングをする人は、休養・睡眠・栄養に気を付けていただきたいですね。風邪をひきやすい場合は生活の見直しも必要だと思います。
Q.自分の免疫力が高いのか低いのかチェックする方法は?

━━続いては40代の女性からの質問です。「自分の免疫力が高いのか低いのか、チェックする方法はありますか」。
血液検査でいうと「白血球数」が一番免疫に近い検査項目ということになります。しかし、普通の血液検査で免疫力のチェックはおこなわれません。
また、唾液のなかに、風邪のウイルスに直接結合してウイルスを不活性化する働きを持つ「IgA」という物質があって、IgAの量が高い人は風邪にかかりにくいという研究があります。

そのためIgAを測ってみるのはいいかもしれませんが、これも研究レベルの話で、一般的には検査していないというのが現状です。調べるとなるとお金もけっこうかかります。

━━ではIgA以外に免疫力をセルフチェックする方法はありますでしょうか。
やはり風邪を引きやすい、傷口から膿みやすいなど、感染症を起こしやすいかどうかなどが一番の目安になりますね。感染症を起こしやすい方は気を付ける必要があると思います。
Q.子どもの頃にいろいろな風邪にかかると免疫力がつく?

━━続いては、お子さんを持つ30代のスタッフからです。「子どものころにいろいろな風邪にかかっておくと免疫力がつくと聞きました。これは本当でしょうか」。
子どもはいろいろな風邪をひきながら、風邪のウイルスに対する免疫を獲得して、抗体を作っていきます。たとえば保育園に行って風邪をひくことがありますが、そういうことを繰り返すことによって体力がつくこともあります。

免疫力のことを「防衛体力」と呼ぶんですが、病原体にさらされながら体力をつけていくという側面はありますね。

ただしインフルエンザなど高熱が出るものは命に関わる可能性があるので、そのような感染症に対してはワクチンで予防するわけです。
Q.免疫は親から遺伝する?

━━続いては20代の女性から「免疫は親から遺伝しますか」という質問です。
はい、免疫系は遺伝します。極端な例では、生まれつき免疫系の機能が低い「原発性免疫不全症候群」という疾患があります。この疾患にはいろいろな種類があるのですが、なかには親から遺伝するものもあります。

ただし、さきほども出てきたようにストレスや栄養なども免疫系に影響を及ぼしますので、一概に遺伝だけで全部を言うことはできません。
━━後天的に変えられる部分がまだあるということですね。
そうですね。
Q.歯磨きは免疫力アップにつながる?

━━最後は60代の男性からです。「歯磨きは免疫力アップにつながりますか」。
少なくとも、歯磨きをして直接的に免疫力が高まるわけではないと思います。しかし60代以上の方は、口の中に雑菌が増えると寝ている間に唾液が肺の方に行って「誤えん性肺炎」を起こすことがあります。

ですから、口の中を綺麗にして病原菌を減らしておくことは、誤えん性肺炎の予防として良いことだといえると思います。
運動・栄養・休養の3つで総合的に免疫力をアップさせよう!

━━これから感染症が気になる季節になりますが、見ている方々にメッセージをお願いできますでしょうか。
まず、運動不足の方には運動を始めていただきたいですね。栄養や休養も組み合わせて、トータルで健康状態を良くすることが免疫系には良いです。
生活習慣の見直しから始めていただいて、ぜひ感染症にかからない良いコンディションを作っていただければと思います。
(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)
■お知らせ
本記事に関連し、早稲田大学スポーツ科学学術院の 鈴木克彦教授 が大会長を務められる 第17回国際運動免疫学会シンポジウム(ISEI 2026 Tokyo)が、2026年8月27日(木)~30日(日)に早稲田大学にて開催されます。詳細につきましては、以下の公式ページをご覧ください。
👉 https://katsu.suzu.w.waseda.jp/ISEI2026_Tokyo_J.html 公式案内ページ
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