スポーツ界のコンディショニング研究の第一人者・杉田正明さんと、自身もアスリートである株式会社TENTIALのコンディショニング研究所所長・舟山健太さんとのコラボ企画。両名とも、冬の体調不良の原因として「隠れ脱水」の可能性を示唆し、警鐘を鳴らした。冬の体調不良はなぜ起こるのか、その背景にある隠れ脱水とは何なのか…。日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。
<杉田正明さんプロフィール>
日本体育大学教授。ハイパフォーマンスセンター長。日本のスポーツ界におけるコンディショニング研究の第一人者であり、東京・パリのオリンピックでは日本選手団の本部役員として科学的支援を行う。
<舟山健太さんプロフィール>
リカバリーウェア「BAKUNE(バクネ)」で知られる株式会社TENTIALの執行役員CRO。コンディショニングに関する基礎研究や商品・プログラムの実証実験、睡眠に関するセミナー・啓蒙活動などに取り組む。脳科学研究もおこなっており、サバット(フランス式キックボクシング)の日本代表選手でもある。
乾燥した空気・短い日照時間…冬は体調不良になりやすい季節

━━冬の体調管理について、お二人はどんなお考えをお持ちでしょうか。
舟山さん)ちょうど今インフルエンザが流行っていると思うんですが、冬は空気が乾燥していてウイルスが伝播しやすいので、とにかく風邪を引きやすいですよね。

杉田さん)冬は日照時間が短いので、やる気を促進してくれる幸せホルモン「セロトニン」の分泌が少し弱くなります。その結果、日中にあまりやる気が出なくなるといった影響があります。これは冬ならではの特徴だと思いますね。
疲れを感じやすい12月…冬の体調不良「冬バテ」が原因かも

━━冬ならではの体調不良を最近は「冬バテ」という言い方で表していると聞いたんですが、冬バテとはどんな状態でしょうか。
杉田さん)寒さや乾燥といった「外的要因」と、年末年始の暴飲暴食や睡眠時間の減少などの内的要因が重なった結果、自律神経やホルモンのバランスが乱れる状態。これが「冬バテ」です。かっこ良く言えば「複合的なストレス状態」と定義づけできると思います。

━━舟山さんは、コンディショニング研究所で冬バテの研究なんかはしてらっしゃるんですか。
舟山さん)1年間のどのタイミングで一番疲れを感じやすいか調査したことがあるんですが、アンケート回答でもっとも多かったのが一番暑くて夏バテをする「8月」で、その次が「12月」でした。

舟山さん)やっぱり年末年始にかけて疲れがすごく溜まりやすいという状況が見えましたね。
冬に悩む肩こり・倦怠感・眠気…全部「冬バテ」だった!?

━━杉田先生、冬バテにもいろいろな不調があると思うんですけど、具体的にはどんなものがありますか。
杉田さん)頭痛、肩こり、暴飲暴食による下痢や便秘、眠気、倦怠感などですね。

━━寒くなって体が冷えることも体調に影響するのではと思うのですが、そのあたりはどうでしょうか。
杉田さん)おっしゃる通りです。体が熱を外に逃がさないようにしようとするので、血液の流れが悪くなります。たとえば血管が収縮して筋肉に水分や栄養が行き渡らなくなると、肩が凝ったり頭痛が起きたりしますね。
年末年始の暴飲暴食・日照時間の短さ…冬の体調管理は難しい

杉田さん)やはり、自律神経とホルモンの乱れがいろいろな症状を引き起こしていると思うので、冬は夏よりもよりコンディショニングに注意を払わないと生活リズムが整いにくいですね。

━━舟山さん、コンディショニング研究所所長としてはどういったところが気になりますか。
舟山さん)冬は朝起きたときも暗くて仕事から帰るときも暗いので、1日中光を浴びないことで体内リズムが崩れていく面もあると思います。あと、忘年会シーズンで暴飲暴食と睡眠不足になってしまうのも、体調に影響しますよね。

━━舟山さんはアスリートですが、忘年会などもあるんですか。
舟山さん)一社目に就職するときに「自分はアスリートなので飲み会には行きません」と宣言して入ったんですよ。行ったとしても1滴も飲まないです。自分の場合、暴飲暴食や寝不足になって次の日のパフォーマンスが落ちてしまうのが一番気になるんです。
愚直に続けることが大事!冬バテは生活リズムを整えて解消

━━杉田先生、冬バテになってしまった場合は、どんなふうに解消したらいいですか。
杉田さん)やはり、朝決まった時間に起きて決まった時間に寝るという、生活のリズムを整えることが大事です。たとえば自分が決めた睡眠時間が7時間だとすると、朝起きる時間に合わせて寝る時間も決まってきますよね。

それに合わせて、忘年会やお風呂などいろいろな日常の生活のスケジュールを決めていく。これを愚直にやるのが一番大切だと思います。
冬こそ水分補給が大事!?頭痛の原因にもなり得る「隠れ脱水」

━━冬は水分を取らなくなっちゃう人もいると聞いたんですけど、水分補給についてはどうですか。
杉田さん)おっしゃる通りで、「隠れ脱水」というものがあります。寒いと喉の渇きのセンサーが働きにくいので、知らない間に脱水しているんですね。

━━舟山さんも、冬の脱水は意識したことありますか。
舟山さん)そうですね。冬場は喉が渇いたかどうかわからなくて飲まない人が多いです。脱水症状で頭痛が起きているのに、本人が脱水を認識してないから頭痛薬をとにかく飲むといったパターンも全然ありえると思っています。ですから冬の水分補給は夏よりも意識しないといけないと思いますね。

━━頭が痛くなるのも水分不足が原因なんですか。
舟山さん)その場合もあります。あとは、寒くて血の巡りが悪くなって痛くなることもありますね。
杉田さん)血液の流れが悪くなると、脳に酸素と栄養がいかなくなりますから。だから、血を巡らせることがポイントですね。
1日1.5リットルを目安に水分補給!水分の種類にも注意が必要

━━舟山さん、アスリートとして冬の水分の取り方で気を付けていることはありますか。
舟山さん)運動の2時間ぐらい前からこまめに水分を摂って、運動する前に体が水分で満たされている状態をなるべく作りたいと思っていますね。運動の直前にガブガブと飲んでしまうとお腹が痛くなることがあるので。
あと、私がサポートしているアスリートの中には、乾燥している地域に行くと体が動きにくいと感じる選手もいます。皮膚や筋肉などの組織が滑りあって動くことを「滑走」と言うんですが、体が十分に潤っている状態だと、この滑走がなめらかになります。一方で、体内の水分が不足していると摩擦が生じ、滑走がうまくいかなくなります。そういったことが原因で動きにくさを感じるのではないかと思います。

━━杉田先生、冬ならではの水分摂取の注意点はありますか。
杉田さん)飲む量はトータルで1日1.5リットルで、1〜2時間にこまめに200mlぐらい摂るのが基本です。その際、冷たいものよりはあたたかいものを取ってあげるほうが、リラックスできます。体が内側から温まって血管が弛緩して、副交感神経の活動が優位になりますから。

舟山さん)飲むものも気を付けなきゃいけないと思っています。たとえばコーヒーなどカフェインが多く入ってるものを飲むと、利尿作用で水分が抜けてしまうこともありますから。アルコールも一緒ですね。「夜にたくさんビールを飲んだから水分補給した」っていうのは、違うかもしれません。
杉田さん)そうですね。水や、カフェインが入っていない麦茶などを摂るのがいいですよね。
ビタミンD不足で疲労骨折!? 冬場は60分太陽光を浴びよう

━━日照時間の少なさも心身に与える影響が大きいんですよね。
杉田さん)そうですね。日照時間は、やる気が出る幸せホルモン「セロトニン」と、免疫・体力アップなどビタミンを超えたホルモンのような働きをする「ビタミンD」の2つの生成に影響します。

舟山さん)ビタミンDは光を浴びることで生成されるんですが、今は「紫外線を浴びるのはダメ」という流れで、なるべく陽の光に当たらないようになっていますよね。
特にインドア系スポーツのアスリートだと、ビタミンDが足りなくなって骨がもろくなって疲労骨折につながることもあります。私の場合は、毎朝犬と40〜50分散歩するので、そこで陽の光を浴びています。

杉田さん)いいですね。冬場は60分陽の光を浴びればビタミンDが作られるので、理にかなった散歩の時間だと思います。朝起きて光を浴びて、1時間以内にご飯食べて、軽く動く。これが体のリズムを作るうえで大事ですね。
━━できるところから私も真似したいと思います。次回は、「睡眠」を軸に冬バテを解消する具体的な実践方法を教えていただきます。
(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)
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