スポーツ界のコンディショニング研究の第一人者・杉田正明さん、アンチエイジング医学の第一人者・満尾正さん、元日経ヘルス編集長で健康医療ジャーナリストの西沢邦浩さんに、今年注目すべき健康キーワードを伺う本シリーズ。第2回となる今回も「アンチエイジング2.0」「AI×食事解析」「ベタイン」などさまざまな最新健康情報について、日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。
<杉田正明さんプロフィール>
日本体育大学教授。ハイパフォーマンスセンター長。日本のスポーツ界におけるコンディショニング研究の第一人者であり、東京・パリのオリンピックでは日本選手団の本部役員として科学的支援を行う。
<満尾正さんプロフィール>
満尾クリニック院長。ハーバード大学で栄養学を習得した日本のアンチエイジング医学の第一人者。1982年、北海道大学医学部卒業。内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、キレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを2002年赤坂に開設、2005年広尾に移転、現在に至る。著書に「食べる投資」アチーブメント社など多数。
<西沢邦浩さんプロフィール>
健康医療ジャーナリスト。早稲田大学卒。小学館を経て1991年日経BP社入社。『日経ヘルス』『日経ヘルス プルミエ』編集長、日経BP総研主席研究員を歴任。現在はサルタ・プレス代表取締役を務めるほか、講演・執筆活動も行う。
アンチエイジング研究が実用フェーズへ!注目の賞レースも

━━西沢さんにとって、今年のキーワードというと何になりますか。
西沢さん)アンチエイジングですね。いよいよ実用のフェーズ「アンチエイジング2.0」に入って、私たちが使えるものがなんとなく見えてきました。
たとえば、今は「X PRIZE」が話題です。これは、人の老化に伴う機能低下を科学的に検証して、最低10年の若返りを目的とした国際コンペなんです。これが証明できたら約1億ドル、日本円で約150億円以上の賞金が出るんですよ。

昨年X PRIZEに世界中のチームが参加して、第1次評価が行われました。それで40チームが選出されて、それぞれ25万ドルずつもらったんですよ。日本のチームも6チーム入りました。
日本のチームは、たとえば細胞内の浄化・リサイクルシステムである「オートファジー」や和食と健康について調べているチームがあります。

西沢さん)そのチームは、和食の構成要素やみんなで食べる文化など、総合的に評価しようとしています。これらの研究が、私たちの普段の行動のなかに健康寿命を伸ばしうる要素があることを、どんどん明らかにしていくと思います。
X PRIZEは今年(2026年)の4月に第2次の応募があって、7月には10チームが選ばれ、2029年に向けて賞レースが始まります。
━━レースの1番が決まるまでの過程で、もうすでに私たちは若返りのヒントをいただけているんですね。
日本人の長寿に繋がる食事がわかる!?昔の偉人の食事をAI解析

━━今年の健康キーワードについて、満尾先生はいかがでしょうか。
満尾さん)前回もお話した「AI」ですね。特にAIに解析してもらいたいテーマが「日本の歴史を振り返って、どんな生活が日本人にとって一番長寿につながるのか」です。

たとえば、平安時代の安倍晴明は84歳ぐらいまで長生きした、千利休も切腹したときが69歳だったと言われています。
千利休の茶会記には「納豆汁」というのが出てきているんですね。これはわたしたちが思っている納豆とは違う納豆汁だと思うんですが、そういう昔の食品の解析が、AIによってものすごいスピードで進むと思います。
認知症予防にもつながる!?乳酸が出る「少しきつい運動」が大事

━━2026年の健康キーワードについて、杉田先生はどうでしょうか。
杉田さん)「ちょっときつい運動を頑張ろう」ですね。楽な運動で健康になりたいという人は多いと思います。
しかし、乳酸(人間が運動する際に筋肉が糖を分解してエネルギーを作るときに生成される)が出るような、少しきつい程度の運動が大事だということが、いろいろな研究からわかってきたんですね。

「乳酸が出ると単なる疲労物質が出てきついだけだ」と思われがちなんですが、ボストンマラソンを走った選手の人たちの便をとってみると、乳酸をエネルギー源にしている菌が便にたくさん含まれている人が多かったんですね。その菌をネズミに注射して走らせると、長く走ったという例もあります。
もちろん、人間にそのまま応用できるわけではないですが、乳酸がいろいろなところでエネルギー源として使われていることがかなりわかってきたんですね。
また、脳に乳酸が入ると記憶や学習の神経回路を作ってくれるシグナルになることもわかってきました。

西沢さん)それって脳神経を作る栄養素「BDNF(脳由来神経栄養因子)」ですよね。ちょっと疲れて乳酸が出たときに「それは疲労だと思ってはいけない」と頭の中で新しい神経ができるんですよね。
杉田さん)はい。BDNFは、もしかしたら認知症予防につながるかもしれないと言われています。ですから、運動するなら「ややきついな」というぐらいの強度を見定めて継続してみると良いです。

━━いわゆるウエイトや筋トレで良いんでしょうか。
杉田さん)はい。何十回もすれば同じような効果が出ますから。
老化防止効果あり!? てん菜に含まれる注目物質「ベタイン」

━━2026年注目の健康キーワードとして、ほかにどんなのがありますか。
西沢さん)ビーツ(てん菜)から見つかった「ベタイン」という物質にも注目しています。
運動をすると、私たちの腎臓がベタインを作って、それが運動による若返り効果の起点になって動いているそうです。そこで研究者たちがビーツのベタインを調べたら、運動と同じ効果があることがわかったんですね。

━━ベタインの効果について、杉田先生はご存じでしたか。
杉田さん)知らなかったです。スポーツ界のコンディショニング研究では、ビーツのジュースを飲んで血液量を増やす「造血作用」は知られていましたが。

西沢さん)これからはビーツを使った料理「ボルシチ」をもっと食べたほうがいいのかもしれないですね。ある会社が、ビーツを使ったアサイーボールのようなスムージー「ビーツボール」を昨年の夏ぐらいに出したんですが、結構売れているらしいです。
━━そういわれると、なおさら気になりますね。
日本人の8割が不足…今年こそ「ビタミンD」を積極的に摂ろう

西沢さん)2026年の健康キーワードとしてもう1つ取り上げたいのは「ビタミンD」なんですが、これはもう満尾先生のご専門ですから。
━━ビタミンは昨年満尾先生がお話しされたときにすごい反響があったので、皆さん注目しているんだなって思いました。
満尾さん)ビタミンDは言うまでもなく皆さんにとっていただきたい栄養素なんですけど、まだまだ知られていないですね。外来の患者さんを診ていると極端にビタミンDの血中濃度が低い方がいらっしゃいます。今年もビタミンDを皆さんに大いにとっていただきたいです。

━━私もここまで聞いていながら、自分の食生活にちゃんとビタミンDが足りているのか調べてないんです。
満尾さん)ぜひ血液検査を受けてください。
杉田さん)ビタミンDは運動能力とも密接な関係があるんですよね。血中濃度が30ng/mL以下だと本来持っている力が発揮できないといわれています。この過不足を補ってあげることで本来持っている力を引き出せると発表している論文もたくさんあります。

西沢さん)昔、小平奈緒さんが金メダルを取ったときにインタビューで何をやっていたか聞かれて「ビタミンDを取っていた」と答えていましたよね。オランダに留学しているときに、向こうの選手はみんなビタミンDを取っていたそうです。

━━今回も、健康になりたい人にとって気になる話がいっぱい出てきたんですけれど、2026年どんなことを大事にしていったらいいですか?
西沢さん)先生方の健康キーワードを頭に入れていただいて、ナイスコンディショニングの一年を送っていただければと思いますね。
(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)
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