世界的に見ても、日本は疲労を感じている人が非常に多い。疲労研究の第一人者・渡辺恭良さんによると、今の日本で疲労がなく元気な人は全体の2割程度しかいないという。なぜ現代の日本人はこんなに疲れているのか、そもそも疲労とはどういう状態なのか……。日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。

<渡辺恭良さんプロフィール>
疲労研究の第一人者。京都大学大学院医学研究科修了(医学博士)。神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科 特命教授、日本疲労学会 理事長、日本リカバリー協会 会長、脳体力振興協会 理事長、Integrated Health Science株式会社 代表取締役 CEO、大阪公立大学健康科学イノベーションセンター 顧問などを務める。大阪バイオサイエンス研究所・名誉所員、大阪私立大学・名誉教授、理化学研究所・名誉研究員。

世界一不健康!? 意外と「疲れている」と言いやすい国・日本

━━先生は疲労の研究をされているんですよね。

はい。「疲労をいかにして回復するか」ということを中心に研究しています。

━━日本は疲れている人が多いイメージなんですが、世界的に見るとどうでしょうか。

少し古いんですが、OECD諸国(34カ国)の主観的な健康度を調べた2011年の統計調査があります。その調査で、日本は「自分が健康だ」と思っている人の割合が30%ぐらいでした。つまり70%の人は「自分は不健康だ」と思っているわけですね。

━━このランキングでいうと、日本はぶっちぎりで最下位ですね。

そうですね。主観的な健康度についていうと、OECDのなかでは日本が一番悪くて、たぶん世界的にもどん底です。

━━これはなぜでしょうか。

日本は意外と「疲れている」って言いやすい、周りの人が優しい国だと思うんですね。そこも違うと思います。

━━なるほど。国によっては、環境的に「疲れた」って言ったらすぐ攻撃されちゃうみたいな。

弱みを見せてはいけない、そんな印象があるのかもしれませんね。

日本人の8割は疲れている…元気な人のほうが実は少数派

━━ほかにも日本人の疲労を示す調査はあるんですか。

私は日本リカバリー協会の会長をしているんですが、その協会の2017年からの統計を見ると、ずっと疲れていて慢性疲労に近い「疲れている人(高頻度)」が40%近くいます。

また、それほどではないけれども疲労を引きずっている「疲れている人(低頻度)」も40%近くいる。「元気な人は20%ぐらいしかいない」というのが最近の統計です。

先行き不安・情報過多・社会の激変…疲れやすい今の日本

━━日本リカバリー協会の2024年のデータを見ると「疲れている人(高頻度)」が44%を超えていますが、これは何が原因だと見ていらっしゃいますか。

みなさん、経済的なことも生活も含めて「一体どうなっていくんだろう」というような、先行きの不安を感じている人がすごく多いと思います。

それから今私たちは、たくさんの情報を処理しなきゃいけない。動画を普通の速度で見ている人は今ほとんどいなくて、処理量がすごく上がってきています。

そこにChatGPTや生成AIが入ってきて、自分が100%理解できない世界がどんどん広がっている状況です。

身体的な疲れと精神的な疲れ…どちらも「脳」が調整している

━━先生のお話を伺っていると、身体的な疲労というよりメンタル・気持ちの不安が疲労につながるんでしょうか。

「身体的な疲労」と「精神的な疲労」とよく分けますが、実はその両方において、脳の司令塔がいろいろなところのコンディショニングをやっています。それを私たちは、2019年から「脳疲労」という言葉を使って表しています。

脳疲労は、脳だけが働いていて生じる疲れではありません。コントロールタワーである脳が全体の疲労をなんとかしようとしてだんだん疲れてくる。そこが問題です。

疲労は体の異変を知らせてくれる「生体3大アラーム」の一つ

━━そもそも「疲労している」っていうのは、どういう状態のことをいうんですか。

「100%のパフォーマンスが70%まで落ちた状態」と定義しています。

私たちは、疲労を説明する際に「生体3大アラーム」という言葉を使います。生体3大アラームというのは「痛み」「発熱」「疲労」です。

たとえば発熱している場合は、体温計でわかりますよね。痛みについても、何か悪いことが起こっている大きなアラートになります。

ところが疲労は、ほとんどメカニズムが分かっていなかった。濡れ衣を着せられた乳酸説とかですね。

━━「乳酸が溜まると疲れる」って聞いたことがあるんですが、濡れ衣だったんですか。

今はもう「乳酸が疲労の原因物質だ」という人は1人もおりません。乳酸はエネルギーを作る物質で、むしろ疲労から回復するうえで大事であることが世界的に明らかになっています。

疲労が溜まる根本原因は疲れても無理して頑張る「人間の性」

疲労において一番の問題は、追い込みすぎることです。実は、動物はどんなにエサが走っていても自分が疲れたらすぐ休むんですよ。しかし人間は、生命の危機があっても徹夜をします。人間の性なんですかね。これが、長引く疲労を生んでいると思います。

動物もある程度は無理をすると思いますが、その無理の度合いが人間と全然違う状況であることは確かです。

自分のペースで動く&シミュレーションで疲れをコントロール

━━疲労の原因というと働きすぎや運動のしすぎをイメージしますが、どちらかというと「立ち向かう気持ち」や「区切りの付け方」が疲労を巻き起こす感じがしますね。

私がよく言ってるのは「ちゃんとシミュレーションをすること」。シミュレーションに則って「自分はここを超えると不調になるから、このへんでなんとかしよう」など、考えていくことが大事です。

この点に関して、実は「年齢の高い人のほうが疲れていない」という統計が出ているんです。

基本的に、自分のスケジュールで動ける人は疲れていない。たとえば上司と部下では、たいてい部下の人が疲れています。

━━わかります。現代人に疲れている人が多いのは、そういうところにも原因があるのかもしれませんね。

疲れの緩和には延命効果がある!?疲労と病気の密接な関係性

━━先生は疲労についての研究で世界をリードしていらっしゃるんですよね。

はい。我々は病気の疲労の研究をしていますが、世界的にもすごくおこなわれています。たとえばガンに関連した疲労。これはいろいろな末期がんの人についてわかっていることなんですが、疲労を緩和していくと非常に延命効果があります。

ですから、アメリカの学会のトップが扱っているのが「疲労」なんですよ。日本と全然違うでしょ。

━━ということは、薬が効く・効かないというのも、疲労しているかしていないかによって違ってくるんですか。

それは、ガンだけではなくて多くの病気でわかってます。ですから我々は「疲労は大事だ」と言っています。

今日の生活に役立つ!疲労について知っておきたい新常識3選

━━では先生に、これから私が紹介することについて一つずつお伺いしていきます。まず1つ目は「〇〇水は疲労に効く」ということですが、何水でしょうか。

「強炭酸水」や「電解水素水」などです。

強炭酸水は血流量を上げ、脳で活動しようとしている部分の活動が長く持続するようになります。

そして、還元力が一番強いのは電解水素水です。体内のサビつきに対処するうえで一番良いものですね。

━━では、2つ目に参ります。「若者に増えているのは◯疲労」ということですが、何疲労でしょうか。

「脳疲労」ですね。たくさんの人たちが今苦しんでいるのは、脳を使いすぎているからです。

脳疲労の原因は2つあります。頭の活動で脳を使いすぎること、そして体全体の調整で脳を使いすぎることです。たとえば、運動をしていても脳はずっと一生懸命動いていて、全身のいろんな調節をしています。

━━しかも、脳疲労は若者に多いんですね。

若者は、高齢者よりはるかに脳を使っていると思います。

━━では3つ目に参ります。「疲労は〇〇を進行させる」ですが、何を進行させるのでしょうか。

「老化」です。

━━疲労を放っておくとどんどん老化してしまうというのは、なんとなく想像できます。

はい。疲労によって病気にも向かっていきますが、老化にもつながっていくということですね。

自分の疲れ具合は疲労ストレス測定システムで簡単に測れる!

━━今や、体がどのくらい疲労してるか簡単に測れるんですよね。

はい、測れるようになってきました。

━━私は事前に「疲労ストレス測定システムVM600」で調べてみたんですが、このシステムではどういった疲労がわかるんでしょうか。

これは自律神経系を図っていますので、まず自律神経のバランスがわかります。たとえば、仕事に向かっているときにどうなっているかなどがわかります。もう1つわかるのが、今話題になっている「脳疲労」です。

━━それでは次回は、この装置を使ってわかった脳疲労について詳しく伺っていきたいと思います。

(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)


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