疲労研究の第一人者・渡辺恭良さんに疲労の原因や回復方法について伺う本シリーズ。第3回目のテーマは疲労を回復させる生活スケジュール術。たとえば朝の水分補給では、単なる水ではなく特別な作用を持つ「あるもの」を摂ると良いという……。今日から実践したくなるさまざまな疲労回復方法について、日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。
<渡辺恭良さんプロフィール>
疲労研究の第一人者。京都大学大学院医学研究科修了(医学博士)。神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科 特命教授、日本疲労学会 理事長、日本リカバリー協会 会長、脳体力振興協会 理事長、Integrated Health Science株式会社 代表取締役 CEO、大阪公立大学健康科学イノベーションセンター 顧問などを務める。大阪バイオサイエンス研究所・名誉所員、大阪私立大学・名誉教授、理化学研究所・名誉研究員。
脳疲労回復のカギは「メリハリ」をつけて1日を過ごすこと

━━前回、幸せホルモンが脳疲労回復のカギになるというお話がありました。幸せホルモンを出すのが大事ということでしょうか。
まず一番大事なのは「メリハリをつけて1日を送ること」です。私たちが朝起きて活動しやすいように、1日のリズムを整えていく。
そして最終的に良い眠りをとるために、幸せホルモンを出すのが大事という位置付けです。たとえば幸せホルモンの一種であるセロトニン系は、気持ちがリラックスして体温が下がり、眠りやすくするという作用があります。

メリハリのある生活ができると、睡眠の質も良くなりますし疲労も和らげられます。理想的な自律神経のリズムが作れると、まず朝に交感神経系が上がってきて、体が活動しやすくなります。

副交感神経系は一定時間、交感神経系と一緒に調節をしながら、全体の自律神経系のパワーを上げていきます。

そして夕方から夜にかけて副交感神経が上がってきて、心拍が少し遅くなって体温が下がり、眠りやすい状況になるわけですね。
朝は日を浴びて軽く運動!「抗酸化作用のある水分」も摂ろう

━━具体的に、生活でどうやったら疲労を回復できるのか教えていただけますか。
一日の日課でいうと、朝起きたときに日光を浴びることが非常に重要です。そのときに、日光を浴びるだけではなく、散歩やラジオ体操などの軽い運動も一緒にやったほうが良いですね。
朝食で気をつけた方が良いのが、水分をちゃんととることです。寝ている間にかなり水分が抜けるので、それを補給するためですね。

そのときに単なる水ではなくて、一日の活動で起こるサビつきや疲労を抑える「抗酸化作用のある水分」を摂ると非常に良いです。
━━具体的にどんな水分でしょうか。
電解水素水(水道水を電気分解して作るアルカリ性の水で、家庭用の整水器などで作ることが可能)やレモン水、コーヒー、お茶などです。

単なるミネラルウォーターを飲むのではなく、少し考えられたものが入っている水を飲むことが勧められます。
仕事に向かうときなど集中力を上げたいときは「強炭酸水」が良いです。強炭酸水は、脳で活動する部分の血流を選択的に上げてくれることが、我々の研究でわかっています。

血流が上がることによって、エネルギーを十分蓄えながら、つまり省エネルギーで動けるようになるんですね。
光・音・仮眠…職場の環境を整えることも疲労軽減につながる

仕事場でいうと、温度や湿度をちゃんと整える、光や音を制御するなどの環境の調整が大切です。
好きな音楽をかけたり、簡単なゲームをしたり、仮眠をしたりするのも良いですね。特に、パワーナップは非常に良いということがわかってきています。

━━ちょっと目を閉じるだけでも楽になるってありますもんね。
そうですね。あとはおやつに、ポリフェノールの入った高カカオチョコレートなどを摂るとサビつき(抗酸化)に良いですし、意欲にも関係してきます。
それから、たとえばプリンターがどのあたりにあると良いかなど「仕事の効率を上げるための動線」を工夫することも大切です。

やはり、皆さんがリラックスしながら集中できる場を作っていくことが非常に大事ですよね。
それから疲労に関していうと睡眠も大事ですから、夜は夕日色の照明を使って暗い状況を作って眠りやすくしていく。

さらに、体温が上がったままだと良い眠りにならないので、入浴は寝る1時間前に済ませることなども重要です。
夕食は疲労回復に直結!「トータルリペア」の栄養素を摂ろう

疲労と食事の観点では、「トータルリペア」の要素があるものを摂ることが大事です。体の肌機能、筋骨格系の機能、脳機能、腸管の機能など全体の機能を元に戻さなければならないので。

具体的には、眠りを良くする「GABA(γ-アミノ酪酸)」、幸せホルモン・セロトニンの原料となる「トリプトファン」、セロトニンから作られる「メラトニン」などが挙げられます。

トリプトファンは肉類に多く含まれる必須アミノ酸です。GABAは副交感神経系の活動を上げたり交感神経の活動を下げたりする神経伝達物質で、トマトやナッツ類にたくさん含まれています。

━━GABAを摂るのは夜が良いんですか。
眠る3時間前が一番良いですね。たとえば、夕飯時や夕飯後など。
━━GABAが夕食に含まれていると睡眠の質が良くなるということになりますか。
はい。夕食は大事ですね。消化が良くて必要な栄養素が含まれていることが大事です。逆に、カフェインやアルコールは眠る邪魔をします。眠る直前にカフェインの多いものを飲んだりアルコールで強く酔ったまま寝たりするのは、決して良くありません。寝ている間の中途覚醒も非常に起こります。

また、我々の体は乳酸菌やビフィズス菌などの腸内細菌と腸管細胞が一緒になって作り上げているので、腸内環境を整えることも疲労を和らげていくうえで非常に大事なポイントです。

━━いろいろなヒントをいただきましたね。試してみようと思います。次回は、疲労に関する素朴な疑問を先生にぶつけていきたいと思います。
(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)
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