疲労研究の第一人者・渡辺恭良さんに疲労の原因や回復方法について伺う本シリーズ。第4回目は、「疲労回復ウェアはどのような効果があるのか」「炭酸風呂は疲労回復に効くのか」「カフェインは疲労に良いのか」など、視聴者から寄せられた疲労に関するさまざまな疑問について、日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。

<渡辺恭良さんプロフィール>
疲労研究の第一人者。京都大学大学院医学研究科修了(医学博士)。神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科 特命教授、日本疲労学会 理事長、日本リカバリー協会 会長、脳体力振興協会 理事長、Integrated Health Science株式会社 代表取締役 CEO、大阪公立大学健康科学イノベーションセンター 顧問などを務める。大阪バイオサイエンス研究所・名誉所員、大阪私立大学・名誉教授、理化学研究所・名誉研究員。

疲労と老化はどちらも「カラダのサビつき」から始まる!

━━今回は疲労に関する素朴な疑問、たくさんいただいておりますのでよろしくお願いします。まず私の疑問からです。第1回目で疲労と老化は密接に関わっているというお話でしたが、最新の研究結果について教えていただけますか。

疲労と老化の両方のメカニズムを見ると、ほぼ一緒なんです。最初の入口は「サビつき」、つまり、オーバーワークをして残った活性酸素を消去しきれないことです。

疲労は、たとえば1日のなかの数十分の活動など、比較的短い時間でサビついた体の部品の機能が低下すること。老化というのはサビついた部品の機能が長い時間をかけて落ちることを指します。

サビつきの修復エネルギー不足…これが長引く疲労の原因に

修復のエネルギーが足りていないと、修復が遅れて、疲労が長引いたり老化が進んだりするわけです。

歳をとると、サビついた部品を修復するエネルギーを作るうえで一番大事な「コエンザイムQ10」が体のなかで十分に作られなくなってきます。たとえば、20歳ぐらいの人と私の年代と比べると半分以下になっていることがわかっています。これは食べ物からほぼ供給できないのでサプリメントでの補給をおすすめします。

疲労と老化…2つのメカニズムの違いは「コゲつき」

サビつきと修復エネルギーの低下が起きて細胞の機能が落ちたあとは、周りの免疫細胞が問題のある細胞を検出してくれたり、その細胞が死んだときに食べて退治してくれたりします。これが3番目の「炎症」です。疲労は、この3つのメカニズムで説明できるんです。

老化の場合は、酸化と修復エネルギーの低下の間に、糖化(コゲつき・メイラード現象)が入ります。

糖化は、アミノ酸のある部分が酸化されて糖がくっついていく反応です。最初にまず酸化が起こって、それから糖化が起こるんですね。

疲労対策は病気の予防にもつながる!長引く疲労は放置NG

疲労と老化、病気の発症のメカニズムはほぼ一緒なんですよ。病気のメカニズムは、老化のメカニズムを、少し特殊な細胞に特化したものになります。

たとえば糖尿病の場合は、白色脂肪細胞(栄養を脂肪として貯蓄し、エネルギーをためこむ細胞)が酸化し、炎症が起こります。そうするとインスリンの働きが弱まってしまい、血糖値が上昇するというわけですね。

━━では、病気や老化を少しでも防ごうと思ったら、疲労を放っておかないことが大事になりますか。

そうですね。疲労を回復していくことによって老化も病気の発症も抑えられます。長引く疲労は絶対に何とかしなきゃいけません。

Q.チョコレートなど甘いものをとると疲労回復効果はある?

━━続いて40代女性からの質問です。「集中する仕事で疲れたときにチョコレートなどの甘いものをとると疲労回復に良いと聞いて実践していますが、本当に効果はあるんでしょうか」。

甘いものは、本当に血糖値が落ちてきたときには効果があります。たとえば高カカオチョコレートに含まれるポリフェノールは、体の酸化を抑え込むことがわかっています。このように、甘いものの成分のなかに良いものがあるのは確かです。

ただ、今言われたような人が低血糖を起こしていることはほとんどありません。

━━単に甘いものが良いというわけではなくて、高カカオチョコレートだったら効果があるということですね。

はい。

━━私、疲れると歯ごたえのあるものが食べたくなっちゃうんですが、これには何か理由がありますか。

硬いものを食べると、咀嚼や噛み合わせによって脳が活性化するんですよ。また、疲労を早く回復させるにはメリハリのつくことをやるのが大事で、その一つとしてよく噛むことも当てはまるかもしれません。

Q.疲労回復ウェアの仕組み&効果は? 選ぶときの注意点は?

━━続いて、多くの方からいただいた疑問です。「最近、疲労回復パジャマのことをよく聞きます。どういう仕組みで疲労に効くのでしょうか?また、選ぶときの注意点を教えてください」。

リカバリーウェアは私もよく使ってます。やっぱり血流・血行を良くするのが一番のポイントですね。

もともとは、病院で寝たきりの人の血行が悪くなって床ずれができる問題があって、それを解消するために特殊素材が使われ出したんですね。そこから、いろいろなリカバリーウェアが作られるようになりました。

科学的な根拠・エビデンスがない製品はやめておいた方がいいと思います。コンディショニング専門の先生に聞いていただくのが一番良いと思いますね。

Q.寝だめをすると疲れる?疲れすぎたらどう睡眠をとるべき?

━━続いて20代女性からの疑問です。「休日の寝だめはかえって疲労が溜まるといいますが、本当ですか。また、疲れすぎたときに休日はどう睡眠をとればいいでしょうか」。

いつも睡眠が足りていない人っていますよね。そういう人が、休日に適正な時間寝るのは全然構わないです。

しかし、たとえば10時間寝るなど、寝過ぎるのはやめた方が良いです。良い睡眠がとれている人は眠りについて5〜10分以内ぐらいで1番深い「徐波睡眠(深いノンレム睡眠)」になるんですが、寝過ぎてしまうとこれがなくなってしまうんですね。

そして、長い時間寝たから次の日は睡眠が短くても大丈夫、といったような「寝だめ」はできませんので、そういった意味でも寝過ぎるのはおすすめできません。

━━睡眠の質は別として、横になることでリラックスできるという場合、これは疲労回復につながっているんでしょうか。

つながっていますね。眠っている時間が長すぎると次の日の睡眠に関わってきますが、横になってること自体が悪いわけではありません。

━━じゃあ、休日にゴロゴロするのがとにかく好きな人は、それでいいんですね。

はい、した方がいいです。やっぱり、自分の嫌いなことをしない方が良いというのは、間違いありません。目覚ましで起きるのも実はあまりよくないです。

Q.カラダの姿勢と疲労は関係がある?

━━20代女性からの質問です。「カラダの姿勢と疲労は関係がありますか。私の母が、数年前から背中が曲がってきて疲れやすくなったと言っています。年のせいもあると思うのですが、どうなのでしょうか」。

姿勢が悪いと、そこが圧迫されて血流・血行が悪くなって、修復がうまくいかなくなりますね。また自律神経の働きも悪くなって調節ができなくなります。

しかし、姿勢というのは難しくて、良い姿勢を保っていた方が良いわけでもないんです。体にものすごい重力がかかるので。それよりも、体を動かした方が良いですね。

同じ姿勢だといろいろなところが緊張してしまって疲労が溜まってしまうので、一番良くないです。

Q.疲れを感じやすい人と感じにくい人の違いは?

━━続いて、30代男性からの質問です。「疲れを感じやすい人と感じにくい人がいる気がするんですが、何が違うんでしょうか」。

元気で健常な人は、自分の疲れや体の異常に対するセンサーがしっかりしている人なんですよ。

反対に、自分の疲れがわかっていない人は、疲労を感知する力が非常に弱くなってます。これは要注意です。

━━ずっと元気だって自分で言っている人がばったり倒れちゃうこと、ありますよね。

それは、ちゃんとセンス(感知)ができてないせいだと思います。疲れに気がつかないのでそもそも休む必要をあまり感じない。

━━難しいですね。疲れを自覚できない人はどうしたらいいんでしょう。

計測計をつけてもらうのが一つの手です。スマートウォッチなどで心拍数などを見ている人、いますよね。客観と主観を合わせていくことがすごく大事だと思います。

Q.疲れやすい季節はある? やはり冬?

━━続いて20代女性からの質問です。「疲れやすい季節はあるのでしょうか。やはり冬でしょうか」。

日本では6〜8月の夏が疲れやすいです。屋外は36度ぐらいで、室内は空調が効いていて26〜28度ぐらいと、10度ぐらいの温度差を行ったり来たりしている回数が非常に多いからです。

夏の温度差・湿度差が人体に与える負荷はとても大きいです。ただ暑いだけで疲れるわけではないんですね。それでいうと、冬も屋外と室内の温度差はあるので、負荷を抑えるためには環境の変化に注意することが重要です。

Q.炭酸風呂には疲労回復効果がある?

━━続いて50代男性からの質問です。「私は疲れたらスーパー銭湯の炭酸風呂に入ります。ある程度の効果は感じているんですが、この疲労回復は合っているんでしょうか」。

炭酸風呂は非常に良いですよ。炭酸は飲むだけではなくて、皮膚から体内に浸透もします。そうすると、血流が上がってくるんですね。

また、お風呂で体温を上げることは、疲労回復にも、カラダのいろいろな修復にも役立ちます。たとえば、私たちのカラダは体温を上げることで細菌やウイルスとたたかうことができますから。

Q.エナジードリンクやカフェインに疲労回復効果はある?

━━続いて30代女性からの質問です。「エナジードリンクやカフェインは疲労回復に効果がありますか。また、飲み方で気を付けることがあれば教えてください」。

カフェインは、一時的に覚醒させるのには良いんです。しかし、眠気を引き起こすアデノシンの受容体にくっついて封鎖してしまうので、眠りにつきにくくなってしまうのが問題です。

そして摂取する時間帯によっては、疲労が非常に強くなってしまいます。長時間の自分のパフォーマンスを考えるなら、カフェインを取らない方が絶対に良いです。特に時間のかかる仕事をする場合、カフェインは絶対に良くありません。

エナジードリンクのなかにはビタミンなど疲労回復に良いものが入っている製品もあります。しかし、エネルギーが湧いてくるように書いてあっても、疲労回復に本当に必要なものが十分に含まれている製品は少ないので、選ぶときは要注意ですね。

━━成分と量をしっかり見極めないといけないですね。では最後に、みなさんにメッセージをお願いします。

はい。疲労、特に少しでも長引くような疲労については、対処していった方が皆さんの元気や活力がずっと続きますし、実りある人生が送れると思います。

━━私は今日の先生の話を聞いて、老化しないためにも病気にならないためにも、疲労は撲滅したいと思うようになりました。いろいろ教えていただいてありがとうございました。

(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)


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