日本のスポーツ口腔医学の第一人者、安井利一先生に口のコンディショニングに関する新常識を教えてもらう本シリーズ。第4回は、番組に寄せられたさまざまな疑問を先生にぶつけた。「朝の歯磨きはいつするのが正解なのか」「どんな歯磨き剤を使えば良いのか」「歯科矯正はどれくらいで終わるのか」など、多くの人が気になる口の健康とケアについて日本テレビホールディングス・古市幸子がインタビューを行った。

<安井利一さんプロフィール>
一般社団法人日本歯科医学会連合理事長。城西歯科大学(現・明海大学)歯学部卒業後、同大学大学院博士課程修了。1997年に明海大学歯学部教授に就任し、病院長、歯学部長を経て、2008年から2023年まで学長を務める。現在は明海大学名誉教授、日本歯科大学客員教授。日本スポーツ歯科医学会理事長も務める。

Q.歯磨きは1日に何回やるのがいい?

━━1つ目の質問です。20代・30代の男性・女性から来ています。「歯磨きは1日何回やるのがいいですか。回数を多くすればいいというわけでもないのでしょうが、頃合いを教えてください」。

1日何回と決まっているわけではないんですが、夜寝る前が一番肝心です。寝ている間は唾液が出なくなってくるので、口の中のバイ菌は喜んで活動しやすくなります。

━━バイ菌が活動しやすくなる前に磨いておきましょうということですね。

ええ。次に歯を磨くタイミングは、朝ごはんが終わった後。朝きれいに磨いてから外に出かけるのは、虫歯や歯周病の予防だけではなく清涼感の観点からも大切です。

昼は、僕はいつも軽く磨いています。昼は食べたり飲んだり喋ったりして、口が結構動いていますから。

朝・昼・晩に磨くのは、自分の生活のリズムとしてよいと思います。歯磨き剤も、歯周病予防や虫歯予防などいろいろな機能の物が出ていますので、朝・昼・晩で取り替えながらやる楽しみもありますよね。

Q.朝の歯磨きは朝一番(食前)と食後のどちらがいい?

━━40代の男性から、こんな質問も来ています。「朝は、朝一番(食前)と食後の両方磨くのがいいとは思いますが、どちらかといえばどちらがいいですか」。

どちらかといえば食後ですね。起きてすぐ磨くとバイ菌を少なくする効果がありますが、朝食を食べたらバイ菌に餌をあげたことになるので「バイ菌とバイ菌の餌を減らす」という観点から、食べた後に磨くのがベターだと思います。

━━以前「夜の間にバイ菌だらけになった口で朝ごはんを食べるのは良くない」と聞いて、歯と舌を磨いてから朝ご飯を食べるようにしているんですが、これは必要ないですか。

いえ、夜の間にバイ菌が増えますから、きれいに落としてから食事をするという考え方もありますよ。しかし、食前に磨いても全部のバイ菌がいなくなるわけじゃないので、朝ご飯の後に歯を磨いてすっきりして出かける方がいいと思います。

Q.歯周病やホワイトニングにいい歯磨き剤は?

━━続いて60代男性からの質問です。「歯周病やホワイトニングにいい歯磨き剤を教えていただけますか」。

ホワイトニングについては、歯を白くする歯磨き剤には「無水ケイ酸」という成分が入ってます。

歯周病の歯磨き剤には、歯周病菌に作用する「殺菌薬」と、歯周病の炎症を抑える「抗炎症薬」の2つがだいたい主役で入っています。

そもそも歯磨き剤には、化粧品の歯磨き剤と医薬部外品の歯磨き剤の2種類があるんですが、効果・効能が謳えるのは医薬部外品のほうです。医薬部外品の歯磨き剤を買えば、歯周病菌を殺す「塩化セチルピリジニウム」や炎症を抑える「グリチルリチン酸」などが入っていますよ。

Q.舌磨きはどのくらいの頻度・タイミングでしたらいい?

━━続いては20代女性からの質問です。「舌磨きはどのくらいの頻度・タイミングですればいいでしょうか」。

舌磨きはやった方がいいとは思いますが、やり方が難しいからか「舌磨きはやらない方がいい」という人もいるんですよね。舌磨きの目的は、舌に付くバイ菌「舌苔(ぜったい)」からの口臭の予防です。

しかし舌の表面には、味覚を感じる器官「味蕾(みらい)」があります。味蕾は粘膜なので、強く磨くと傷が付いてしまうんです。だから「舌を磨くのは朝1回だけ、それも力を入れずにかき出す程度」と勧めています。

ゴムのヘラのような舌磨き用クリーナーも売っているんですが、僕は歯ブラシでもいいと思っています。臭い物質は舌の奥のほうに付いているので、歯ブラシでかき出すイメージで。

Q.寝ているときの歯ぎしり…今後の影響と対策は?

━━続いて30代男性からの質問です。「私は寝ている間、歯ぎしりをしているようです。今のところ影響は出ていませんが、今後の影響と対策について教えてください」。

歯ぎしりは、考えているよりも歯に力がかかっています。普通、歯は平らではないので噛みしめても力が分散されます。しかし、歯ぎしりをする人は歯が擦り減ってきてまっ平らになってくるので、歯にまともに力がかかってしまいます。アメリカのスポーツ選手で、歯を噛みしめて歯が割れた人もいましたね。

寝ている間にバリバリと歯ぎしりをしていると、歯を支えている骨の方が参ってしまうわけです。そういうときは「オーラルアプライアンス(口腔内装置)」を上顎に入れると、歯自体にあまり力が伝わらないで済みます。

歯ぎしり防止装置は保険適用なので、歯ぎしりを気にされている方はかかりつけの歯科医院の先生に伝えると作ってくれると思いますよ。

Q.歯列矯正の終了時期は分からないものなの?

━━続いては20代女性からです。「歯並びが悪く歯の矯正をしているのですが、お医者さんに『いつ終わりますか』と聞くと答えを濁されました。終了時期って分からないものなんですか」。

歯列矯正は、歯を動かす「動的治療」の時期と、並んだ歯を動かないようにする「保定」の時期があって、2つは同じくらいの時間がかかるんです。

また、矯正にかかる期間は装置や年齢、どこまでを目標にしているかによっても違います。たとえば、歯並びだけでなく噛み合わせを直すとなると、歯のサイズと顎のサイズが合わなかったりして結構大変です。

患者さんの歯の動くスピードも関係ありますね。歯を動かすということは、骨がなくなることと作ることが一緒に起こっているわけですが、年齢によってこのスピードが違います。早く動かし過ぎると、歯がグラグラになって抜けることも考えられます。

━━今回質問されている方は20代の方なんですけど、若い方の方がやっぱりスピードが早いんですか。

ええ。早いですし、痛みも少ないです。だから、矯正をするのは発育が終わって顎が安定する中学生や高校生が多いんですよね。成長している間に歯を動かすと、せっかく歯を並べたのにスペースが空いてしまうことがあります。

最近は、大人の「成人矯正」もすごく多くなってきています。この場合、どのぐらい歯が動くのかが余計に予測ができないので、終了時期についてはとても答えにくいと思います。

Q.舌や頬の内側の口内炎は栄養不足?何を食べればいい?

━━続いて20代の女性からの質問です。「舌や頬の内側に口内炎ができる場合、何かの栄養が不足してるんでしょうか。どんな食べ物を食べればいいでしょうか」。

口内炎といっても、いろいろな種類があります。小さいものが舌の脇や頬にできる一般的な「アフタ性口内炎」は、栄養が不足している可能性も無きにしもあらずです。

どんな食べ物がいいかと聞かれたら、一般的にはビタミンB類・C類と答えますね。B群のなかでも、ビタミンB2やビタミンB6は口内炎を含めた粘膜の病気に使うことが多いです。

ビタミンCもいいんですが、口内炎があるときにビタミンCを含む食品は染みてしまって食べられないこともありますよね。あとは亜鉛不足で口内炎ができることもあります。

━━口内炎を早く治したかったら、歯科に行って薬を出してもらうのもいいかもしれませんね。

そうですね。市販でも、口内炎に塗る薬が出ています。

口の中のケアが人生を作る!よく噛んで食べて体全体を健康に

━━最後に、口の健康について先生から教えていただけますでしょうか。

いつも患者さんには「自分の幸せや楽しみ、人生をいかにして作っていくかというとき、騙されたと思って口の中を良くしましょう」と伝えます。そうすることで栄養・運動・休養が整うと思います。

口の中を良くすることで、なんでも食べられて体の基礎を作ることが「栄養」につながります。また、「運動」でいうと歯が欠けてしまうと噛み合わせが悪くなって運動能力が下がってしまうので、口のケアをして噛み合わせをちゃんと守ることも重要です。さらに、噛める歯を維持して美味しく食べることができれば、ストレスコントロールにもなり、「休養」につながります。

口の中で、自分自身の生き様を作ることができる。歯磨きの仕方や食べ方など、口のことを考えながらやっていると体全体も健康でいられると思いますので、同じ生き方をしていただきたいなと思います。

(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)


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