杉田正明さん、満尾正さん、西沢邦浩さんに、4回に渡って2026年下半期に注目すべき健康・コンディショニングのトレンドを聞く本シリーズ。第2回のメインテーマは「プロテイン」。研究によってプロテインだけの摂取は体への悪影響があるとわかり、タンパク質のとり方のトレンドが今変わりつつあるという。タンパク質をどのように摂取するのが正解なのか、日本テレビホールディングスの古市幸子がインタビューをおこなった。
<杉田正明さんプロフィール>
日本体育大学教授。ハイパフォーマンスセンター長。日本のスポーツ界におけるコンディショニング研究の第一人者であり、東京・パリのオリンピックでは日本選手団の本部役員として科学的支援を行う。
<満尾正さんプロフィール>
満尾クリニック院長。ハーバード大学で栄養学を習得した日本のアンチエイジング医学の第一人者。1982年、北海道大学医学部卒業。内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、キレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを2002年赤坂に開設、2005年広尾に移転、現在に至る。著書に「食べる投資」アチーブメント社など多数。
<西沢邦浩さんプロフィール>
健康医療ジャーナリスト。早稲田大学卒。小学館を経て1991年日経BP社入社。『日経ヘルス』『日経ヘルス プルミエ』編集長、日経BP総研主席研究員を歴任。現在はサルタ・プレス代表取締役を務めるほか、講演・執筆活動も行う。
プロテインだけの摂取はダメ!?研究でわかったマイナスの影響

━━満尾先生、今年下半期に注目すべき新常識の発表をお願いします。
満尾さん)はい。そろそろプロテインブームも下火というか、気を付けた方が良いと思っていて。患者さんには「プロテインをとるんだったら納豆を毎日食べましょう」とお話しています。

━━プロテインブーム終了ですか。西沢さん、これはいかがですか。
西沢さん)そうですね。特に欧米では、機能性食品の分野で一番キーワードとして強かったのがプロテインなんです。だから研究もよく行われていたんですけれど、プロテインだけとっていると腸に悪いなど、マイナス面も見えてきたんですよ。
食物繊維をとろう!2026年トレンド「ファイバーマキシング」

西沢さん)プロテインのマイナスの影響が見えたことで、食物繊維を意識的に増やす食事法「ファイバーマキシング」がすごく流行るようになりました。
TikTokでファイバーマキシングと検索すると、2026年の頭ぐらいで1億5,000万回くらいヒットしたらしいんです。

西沢さん)それで、プロテイン主体で売ってきたメーカーもだんだん「withファイバー」の方向になってきたんです。プロテインはもちろん重要ですが、それだけじゃダメということですね。
━━プロテイン(タンパク質)と一緒にファイバー(食物繊維)もとるということですね。

西沢さん)たとえば、体内に吸収されないものは腸内細菌が食べるんですが、そのときにファイバーがあると腸内細菌が良い物質を作るとわかってきたんです。
反対に、ファイバーがないとあまり良くない物質を作ってダメージが生まれちゃったりする。一番良く言われるのは「腎臓にダメージがいく」ですね。腎臓病の方はタンパク質を制限しなさいっていうじゃないですか。

━━杉田先生、トップアスリート界でもそんなふうに言われているんでしょうか。
杉田さん)そうですね。この5、6年ぐらいそういう論文が出ています。
それから、腸内細菌が食物繊維から作る物質「短鎖脂肪酸」は炎症の抑制や免疫機能のサポートなどに関係します。そういう観点でも、腸内細菌はアスリートのリカバリーに非常に重要です。

西沢さん)たとえば体重60kgの人はタンパク質60g・食物繊維20g(タンパク質の3分の1)をとったほうが良いんですが、今の日本人は目標値を大きく下回る量の食物繊維しかとっていません。
おすすめは豆類!ただし非発酵性大豆食品の摂りすぎに注意

━━満尾先生、一般の人もプロテインをとっていますが、日常生活ではどういうことに気を付けたら良いんでしょうか。
満尾さん)はい。タンパク質と食物繊維を一緒にとれる代表的な食品が「豆類」で、日本人は豆類の摂取量が少ないと言われています。
しかし一つ気を付けなくてはいけないのが、豆乳や豆腐など、大豆を発酵させないで食べる食品をとりすぎると膵臓がんのリスクが増えることです。数年前に、国立がんセンターさんが日本人を対象としたそういったデータを出しました。

満尾さん)一方で、納豆や味噌など発酵した大豆食品は、多少多めに食べても膵臓がんのリスクが増えないっていうデータもあるんです。
西沢さん)大豆を1日80gぐらいとると、血圧を下げたりする効果が頭打ちになっちゃうんですよね。
日本人の食べる豆の8割以上が大豆で、あまりにも大豆に集中しすぎてるんです。海外に行ったら5〜6種類くらい豆が入ったサラダが出てきます。

西沢さん)大豆以外の豆で1日180gぐらいとると体重も増えないし死亡リスクも減るっていうデータがあるぐらいです。
だから、豆は基本的に素晴らしい食材ですが、偏食しないようにしましょうってことですね。

満尾さん)プロテインの話に戻ると、プロテインの原料はホエイ(牛乳由来)とソイ(大豆由来)があります。ソイプロテインをとりすぎると、さっき申し上げたようなリスクが起きる可能性は否定できません。
やっぱりすごい!日本のコンディショニング食品・納豆の魅力

━━じゃあ満尾先生、納豆は何がいいんですかね。菌がいいんですか。
満尾さん)納豆の効用を話すと一日かかっちゃいます。
まず、腸内細菌のバランスを整えてくれて、便通が良くなる方が多いですよね。また、骨の形成をサポートするビタミンK2も含まれていて、納豆を多く食べる地域の方が骨粗鬆症になる率が少ないという研究もあります。

満尾さん)さらにイソフラボンが含まれているので、美肌効果や、骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐ効果も期待できます。
あとは、アンチエイジングの世界で話題になっている抗老化物質「スペルミジン」や、体内の有害な物質を外に出す「ジピコリン酸」もあります。ナットウキナーゼによって血栓を防ぐ働きも期待できますね。

満尾さん)あの価格で、これだけの働きを持っている食品は、探してもそうそうないと思います。
西沢さん)食物繊維の多い食品って乾物が多いんですが、乾物ではなくそのまま食べられる食品の中で納豆は極めて食物繊維が多い部類に入るんですよ。
1パック40gを食べると、タンパク質は6.6g、食物繊維は2.7gくらいとれて、非常にバランスがいいんです。

西沢さん)納豆には「タンパク質withファイバー」の潮流に乗れるくらいの良さがありますね。特に、世界の日常的な食品の中で一番ビタミンK2を取れるのは、どう考えても納豆だと思います。
納豆のニオイ・ネバネバが嫌なら「ドライ系スナック」で摂取

杉田さん)僕、納豆が食べられないんですよね。ニオイとネバネバが苦手で……。
西沢さん)ドライ系のスナックもありますから。僕、乾燥させた納豆を海苔で巻いてあるやつ、好きなんです。
納豆って発酵する間にポリグルタミン酸(うまみ成分・グルタミン酸が結合したもの)が増していて、こういうスナックはそのポリグルタミン酸が凝縮されているんですよ。

━━杉田先生も、実際に指導していらっしゃるアスリートの方には「納豆は良いですよ」ってすすめることがあるんですよね。
杉田さん)そうですね。トップアスリートでいうと、大谷翔平さんも納豆を食べているっていいますし、マラソンの高橋尚子さんは多いときで1日4パック食べていたという報道もありました。

杉田さん)納豆は日本版のコンディショニング食品みたいな位置付けで、アスリートは朝ごはんに1品つけて食べていますね。
キムチ・マヨ・お茶漬け・キノコ…医師が勧める納豆の食べ方

━━満尾先生、納豆のニオイやネバネバが苦手な方におすすめの食べ方ってご存知ですか。
満尾さん)キムチを入れたら多少ニオイがカバーされますよね。あとは、マヨネーズをかけたり砂糖をかけたりする人もいますね。
━━満尾先生は日頃どうやって納豆を召し上がっているんですか。
満尾さん)納豆茶漬けです。お茶漬けの素にお湯をかけて、納豆と一緒に食べています。食物繊維が意外と多いキノコ類も活用していただくと良いんじゃないでしょうか。

━━私、実践してます。シメジかナメコをレンジで加熱して、納豆を混ぜて食べています。これは良いってことですね。
満尾さん)はい、そうですね。
西沢さん)食物繊維は、意識せずに普通の食生活をしてると、どうしても不足しがちになりますからね。
━━やっぱり2026年も納豆はおすすめ食材No.1ということでした。今回お聞きしたお話も非常に役に立ちました。次回もよろしくお願いします。
(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)
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