健康・コンディショニングのスペシャリスト3人に、2026年下半期に注目すべきトレンドをインタビューした本シリーズ。最後となる第4回のテーマは「ため息健康法」だ。ネガティブなイメージを持たれがちな「ため息」だが、近年は心身を整える手段の一つとして注目されている。なぜため息が体にとって良いのか、どのように取り入れればいいのか……。日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。

<杉田正明さんプロフィール>
日本体育大学教授。ハイパフォーマンスセンター長。日本のスポーツ界におけるコンディショニング研究の第一人者であり、東京・パリのオリンピックでは日本選手団の本部役員として科学的支援を行う。

<満尾正さんプロフィール>
満尾クリニック院長。ハーバード大学で栄養学を習得した日本のアンチエイジング医学の第一人者。1982年、北海道大学医学部卒業。内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、キレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを2002年赤坂に開設、2005年広尾に移転、現在に至る。著書に「食べる投資」アチーブメント社など多数。

<西沢邦浩さんプロフィール>
健康医療ジャーナリスト。早稲田大学卒。小学館を経て1991年日経BP社入社。『日経ヘルス』『日経ヘルス プルミエ』編集長、日経BP総研主席研究員を歴任。現在はサルタ・プレス代表取締役を務めるほか、講演・執筆活動も行う。

「幸せなため息」でストレス軽減!息をはき出すことが大事

━━それでは西沢さん、今年下半期の注目すべき新常識をお願いします。

西沢さん)「もっとため息をつこう」「ため息は健康に良い」ということですね。

━━ため息って、あまりついちゃいけないと思っている人が多いと思うんです。ため息をつきたくなっても我慢するぐらいですし。

西沢さん)それは不幸なため息ですよね。温泉に入ったときのように、もっとハッピーなため息をついてみたらどうでしょうか。

西沢さん)きちんと息をはき出すことが重要なんです。今みんな、呼吸が浅くなっているんですよ。吸う息も浅いし、はく息も浅い。

去年の終わりぐらいに、なかなか面白い研究が出たんですね。その研究によると、ため息を繰り返していると肺の柔軟性が増すらしいんです。その結果、呼吸が楽になってきて、ストレスが下がるというわけです。

1日5分でOK!スタンフォード大が研究した「ため息健康法」

━━ため息はどれぐらいつけばいいんですか。

西沢さん)スタンフォード大学が以前提唱した「ため息健康法」があるんですよ。「サイクリック・サイイング」といって、鼻から二段階で息を吸って口から長くはく方法です。

西沢さん)これを1日5分やると不安感が減ったり喜び度合いが増したりするっていう研究があるんですよ。「スタンフォード サイクリックサイイング」で調べると映像も出てきます。

━━5分って結構大変ですね。

西沢さん)普段そういう感じで呼吸していないので、それなりの運動にもなると思います。

アスリートは「息を2〜3倍はく呼吸法」で緊張を緩和している

━━スポーツの世界でも、ため息健康法に通じるものがあるんですか。

杉田さん)言い換えると「呼吸法」ですよね。息を吸う2〜3倍の時間をかけて息をはくという呼吸法を何分間か繰り返すと、副交感神経活動が上がって緊張やストレスが緩和されるといわれていますね。

西沢さん)先生のおすすめの呼吸はどんな感じなんですか。

杉田さん)5秒吸って15秒はく方法です。はく時間が長ければ長いほど、副交感神経が優位になります。3〜5分ぐらい繰り返せば十分に効果があると思います。

━━トップアスリートの方はどういうときにこの呼吸法をやっているんですか。

杉田さん)試合前の緊張感を和らげたいときや、寝る前にリラックスしたいときなどですね。副交感神経活動が優位になると血圧がうまく調整されて下がりますから。

「はいてから吸う」が大切!腹式呼吸でアンチエイジング

━━呼吸法について、アンチエイジングの分野ではどうでしょうか。

満尾さん)西沢さんがおっしゃるように、はく息を大事にしましょうといわれていますね。「呼吸」の「呼」が息をはくことを意味しているように、息をはいてから吸いましょうと。

しかし現代人のほとんどは「吸ってからはく」に意識がいっています。肺も排泄器官ですから、肺から汚れた空気を出し切って新鮮な空気を入れるという意識が大事だと思います。

満尾さん)たとえば息を吸うと脈が早くなって、反対にゆっくり息をはくと脈がゆっくりになります。これはすなわち、吸うときに交感神経が優位になって、はくときに副交感神経が優位になっているということです。

満尾さん)一番良いのは、腹式呼吸をマスターして呼吸を自在に操れるようになることだと思います。老廃物も出て、アンチエイジング効果バッチリだと思います。

1日10回深呼吸しよう!最近注目の「肺脳相関」の考え方

━━ 一般の人で、アンチエイジングのために呼吸法をやるなら、どうしたらいいでしょうか。

満尾さん)難しい理屈は抜きで、深呼吸を1日10回でもしましょう。朝昼晩3回ずつでも十分だと思います。

呼吸が浅いと空気が溜まる肺の奥の組織「肺胞」が機能しなくなって、老廃物を出す力も弱くなります。だから、はいて十分空気を吸ってあげるっていう深呼吸だけでも大いに効果があると思います。

満尾さん)腸と脳が相関している「腸脳相関」という言葉は一般的に知られるようになったんですが、最近は「肺脳相関」という言葉も出てきましたね。肺の機能と脳の働きがリンクしているんじゃないかといわれています。

満尾さん)呼吸を健全にすることで脳の働きもスムーズになる可能性があるといえると思います。

好きな音楽をかける・ヨガをする…息を深くはく効果的な方法

━━深くはくって苦しい感じがして、なかなか進んでやりたがらないなって思うんですが。

西沢さん)自分の好きな音楽に合わせて呼吸を合わせていくと効果が高いという研究もあります。自分が癒されるものを見ながら呼吸をしていくのも良いと思いますね。

━━ため息以外で自律神経をコントロールする方法ってないですか。

満尾さん)自律神経は自分で調整できないんですが、「唯一調節可能な方法が呼吸だ」「呼吸をコントロールすることで自律神経を逆にコントロールしよう」という考え方なのが、ヨガです。

歌うと肺もノドも口も鍛えられる!カラオケはまさに健康法

━━歌を歌うときはしっかり呼吸をするんですが、カラオケや歌を歌うことは、呼吸法の観点でいうとどうでしょうか。

西沢さん)いいですね。ノドが強くなるので、誤えん性肺炎のリスクが下がりますし。カラオケをやっている高齢の方々がしっかり健康になっているので、そういう研究のジャンルはあります。

杉田さん)呼吸筋という筋肉もありますから、その強化トレーニングにもなると思いますね。

西沢さん)歌を歌うと肺を使ったりノドも震わせたりするので、肺もノドも口の機能も鍛えられるじゃないですか。だから、カラオケをした方がいいですよね。

ウエストが10cm縮む!?大ヒットした「5秒ため息ダイエット」

西沢さん)この企画をやっていて思い出したんですが、昔『日経ヘルス』という雑誌をやっていたときに「5秒ため息ダイエット」っていう大ヒット企画があったんです。

━━ため息がダイエットになるってことですか?

西沢さん)最初に息をはき切って、息を吸ってまたはいて、はき切ったあとに5秒数えるんですよ。

はき切ったあとに腹筋を触ってみてほしいんですが、結構硬くなってますよね。この呼吸法の変形パターンを作って、今度は体をひねって5秒はき切ったり。

西沢さん)あまり運動していなかった読者を集めてこの呼吸法をやってもらったら、1ヶ月で10cmぐらいウエストが縮まった人もいました。

姿勢が悪いと腸の位置が下がってくるんですが、呼吸法で腹筋の使い方がわかってくることで腸の位置も変わるんですよ。便秘も解消していましたから。

━━満尾先生、この辺についてはどうですか。

満尾さん)大いにあると思います。

━━今日からやろうと思います。いろいろお話を伺いました。ありがとうございました。

(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)


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