今回から4回にわたって取り上げるテーマは「腎臓」。幅広い研究分野で活躍する医師・根來秀行さんによると、腎臓は寿命を左右するくらい重要な臓器だが、状態が悪化しても痛みがなく、知らないうちに重篤な状態になっているケースもあるという。腎臓の役割や腎臓病の症状などについて、日本テレビホールディングス・古市幸子がインタビューをおこなった。
<根來秀行さんプロフィール>
ハーバード大学およびソルボンヌ大学医学部客員教授。内科学、循環器病学、抗加齢医学、睡眠医学を専門とし、多岐にわたる研究分野で国際的に活躍する。日本抗加齢医学会評議員。日本テレビ『世界一受けたい授業』などのメディア出演のほか、『100年はたらく腎臓をつくる! 「腎トレ」ウォーキング』(青春出版社)、『老化は腎臓で食い止める! 腎機能を自分で強化する名医のワザ』(宝島社)など著書多数。
老化を抑制する役割も!?意外と知らない腎臓の重要な役割

━━腎臓は人生100年時代のキーとなる「命の要」といっても良い臓器ということですが、どういうことなんでしょうか。
そうですね。「腎臓が寿命を決める」と考えられるくらい、腎臓は体の中で非常に重要な役割を担っています。
研究もどんどん進んでいて、最近では腎臓が老化を抑制する臓器としての位置づけもされています。
━━そもそも腎臓はどこでどのような働きをしているんでしょうか。
正面の図から見ると、お腹の部分の背中寄りにあります。そら豆状で、握りこぶしサイズのものが左右に1つずつあるんですね。

腎臓の要となる仕事は、皆さんご存じのとおり、血液をろ過したり再吸収したりして、体に不要な老廃物を尿として外に出すことです。

同時に腎臓は「ホメオスタシス」といって体の恒常性を一定に保つ役割も担っていて、pHや電解質のバランス、水分量などすごい精緻なところまでコントロールしています。

さらに最先端の研究では、腎臓が「クロトーたんぱく質」を作って老化を防ぐ役割も担っていることがわかってきているんですね。

━━もちろん体になくて良い臓器はないと言いますが、思ったよりも腎臓は大活躍しているんですね。
沈黙の臓器・腎臓が限界のときに現れる3つの尿の症状

━━腎臓が悪くなると、どのように体に表れてくるんですか。
ここがちょっと厄介なところなんですが、腎臓には「沈黙の臓器」のような側面があって、限界くらいまでいかないと症状が出にくいんです。
もうダメだというときにいろいろな症状がバッと出てきて、気づいたときには手遅れということもあり得なくはないです。

━━怖いですね。どんな症状があるんですか。
重篤になる手前で出てくる症状としては、頻尿になったり、尿にタンパクが混ざって尿が泡立ったり、血で尿の色が濁ったりなどですね。尿の見た目で気づける場合もあります。

━━じゃあ、「ここが痛い」みたいな気づき方はなかなかしにくいんですね。
そうですね。
20歳以上の7〜8人に1人が腎臓病!?悪化に気づいていない人も

━━腎臓病の方は、今どれぐらいいらっしゃるんでしょうか。
慢性腎臓病の推計患者数は、2023年の段階で1,480万人程度いると考えられています。20歳以上でいうと7〜8人に1人の割合です。

━━その7〜8人に1人の方は、腎臓が弱っていることに気づいていない方も多いんですか。
気づいていない方もいらっしゃいますし、健康診断で数値を指摘されて気づかれる方も結構いると思います。
健康診断の項目「eGFR」で腎臓の状態をチェック!

━━健康診断ではどのような数値を見たら良いでしょうか。
腎臓の数値としては「eGFR」というものがあります。腎臓の機能の低下を客観的に判断しやすい指標になっています。

━━この値がどれくらいまでだったら安全なんでしょうか。
60ぐらいまでなら腎臓機能はそれなりに働いていて、60に近づいてくると軽度の腎臓病と判断される値になってきます。15を切ると透析に移行していくイメージです。
50代で3割減!?腎臓の働きを支える「ネフロン」は加齢で減少する

━━腎臓はどういう働きをして血液をろ過しているんですか。
左右の腎臓それぞれに「ネフロン」という組織が100万個ずつあります。これが腎臓機能の本体ともいえる部分です。

このネフロンに血液が流れてきて、ろ過して、本当に不要な老廃物が約1%ぐらい尿として外に出る。そういう仕組みになっております。
━━腎臓病になったり腎臓の働きが悪くなったりする原因は何なんでしょうか。
ネフロンは消耗品のような側面があって、加齢とともに全体の数が減っていくこともあります。特に60代になると、かなりの量が減ってきます。
━━私は今50代なんですが、一番のピーク時から比べるとどれぐらい減っているんでしょうか。
生活スタイルにもよるんですが、3割くらい減ってる可能性も、なくはないですね。

━━それだけ腎機能が落ちているということですね。消耗品ということは、なくなったものはもう戻ってこないということですか。
そうですね。少なくとも現状の科学では難しいです。いかにネフロンを大切にしていくかというところが、非常に重要な考え方になると思います。
高血圧などの「生活習慣病」でもネフロンが減少してしまう

━━じゃあ、腎臓が長持ちするかどうかはネフロン次第なんでしょうか。
そうですね。今ネフロンにフォーカスしていますが、結局ネフロンが減っていく原因には、加齢以外に「生活習慣病」もあるんです。
━━たしかに、腎臓というと「しょっぱいものを食べてると腎臓が悪くなるよ」と言われたことがあります。
単純にはいえないとこもあるんですが、塩分を多く摂る習慣があると、血圧が上がりやすくなるんですよね。

実際、高血圧によって引き起こされる「腎硬化症」という状態もあって、慢性腎臓病や腎不全に至る非常に大きな原因として捉えられています。
糖尿病が原因で腎臓病になる割合が増加している!

最近、慢性腎臓病や腎不全になる原因疾患として非常に多いのが「糖尿病」なんです。
━━糖尿病も腎臓に関係あるんですね。
血糖が高い状態が続くと腎臓病につながるんです。最近の日本透析学会の統計でも、腎不全に至る原因疾患として一番多いのが糖尿病で、2番目に多いのが腎硬化症です。今はこれらがツートップの状態になっています。

ですから、生活習慣病が慢性腎臓病や腎不全を引き起こしていくといえると思います。
━━では、次回は腎臓を破壊する高血糖についてお話を伺います。
(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)
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