国際的に活躍する医学博士・根來さんに、4回にわたって腎臓と健康の関係について話を伺う本シリーズ。第3回は、根來さんが考案した毛細血管トレーニングメソッドの実践方法についてインタビューをおこなった。今回、特に注目したのが「血管を緩める呼吸法」。呼吸によって血管や自律神経にどのような変化が起こるのか……。日本テレビホールディングス・古市幸子が迫った。

<根來秀行さんプロフィール>
ハーバード大学およびソルボンヌ大学医学部客員教授。内科学、循環器病学、抗加齢医学、睡眠医学を専門とし、多岐にわたる研究分野で国際的に活躍する。日本抗加齢医学会評議員。日本テレビ『世界一受けたい授業』などのメディア出演のほか、『100年はたらく腎臓をつくる! 「腎トレ」ウォーキング』(青春出版社)、『老化は腎臓で食い止める! 腎機能を自分で強化する名医のワザ』(宝島社)など著書多数。

腎臓を整える!先生考案の「毛細血管トレーニングメソッド」

━━早速ですが先生、腎臓や毛細血管を整える方法を教えていただけますか。

はい。国際的・学術的なエビデンスをもとに、「一般の方にわかりやすく咀嚼して伝えたい」という気持ちから「毛細血管トレーニングメソッド」という方法を考案しました。

「毛細血管トレーニングメソッド」は3つのパーツから成り立っています。1つ目は毛細血管の血流を流す、2つ目が毛細血管を中心に血管を緩める、3つ目が血管を緩める時間をキープするという構成になっていて、この3つのパートを毎日ぐるぐる回していきます。

このトレーニングを2週間、3週間、1ヶ月と続けていくと、毛細血管が蘇っていくことが実際確認できています。

副交感神経を高める「4・4・8呼吸法」で血管を緩めよう

話の都合上、まず2番目の「血管を緩める」について具体的な実践方法をお話しします。それが「4・4・8呼吸法」です。メジャーリーガーやプロ野球選手、最近では青学の駅伝選手にも使っていただいています。

腹式呼吸では吸うときにお腹を膨らませて吐くときにお腹をへこませますが、これを4秒吸って、4秒止めて、8秒かけてゆっくり吐く。これが4・4・8呼吸法です。

━━腹式呼吸は知っていたんですが、4秒、4秒、8秒と呼吸すると、血管に良いんですか。

はい。特に毛細血管に良いことが起こりやすいです。自律神経には日中活動するときに優位になる「交感神経」と、リラックスしたり夜寝たりするときに優位になる「副交感神経」があるのですが、4・4・8呼吸法をすると副交感神経を高めることができるとわかっているんですね。

━━最近「自律神経を整えよう」とよく言われますが、副交感神経を優位にする方が良いんですか。

日中は活動的にならないといけないので、交感神経が高まることは必要です。そういうときに副交感神経が上がり過ぎると、だらっとして集中できないこともあり得るわけです。

反対に、僕の研究でも、たとえば「夜12時になっても交感神経が高めで、なかなか副交感神経が上がってこなくて睡眠がとりにくい」という人が増えていることがわかっています。

また、30〜40代になってくるとそもそも副交感神経が上がりにくくなるんですよね。

━━やっぱりそうなんですか。すごく実感しています。

ですから、副交感神経を上げることを意識すると体にとっては非常に意味があるわけですね。

息を止めるのにも意味がある!呼吸は自律神経と深く関係

━━呼吸だけで自律神経のバランスが変わるものなんですか。

自律神経は呼吸や心拍などを自動的に整えてくれていますが、呼吸に関しては意識的に介入できる部分なんです。

腹式呼吸は、横隔膜を動かす呼吸なんですよね。横隔膜は息を吸うときに収縮して下がり、息を吐くときにゆっくり緩んで上がります。

肺自体には筋肉がないので、横隔膜などの周りの動きで息が外に出るわけです。

無意識的に動く神経と意識的に吸ったり吐いたりできる神経の両方が張り巡らされているので、息をゆっくり吸うと交感神経にシフトして、ゆっくり吐くと副交感神経がぐっと高まるというメカニズムなんです。

━━息を止めるのはどういう意味があるんですか。

息を止めると二酸化炭素が蓄えられて、全身の細胞に酸素が行き渡りやすくなるんですよね。

まずは16秒やってみよう!背中やお腹の緊張をほぐすのも大切

4・4・8呼吸法を3分ぐらいすると副交感神経は絶対優位になります。1セット16秒なので、4〜12回やっていくとリラックスできるというわけです。人知れずできるので、ぜひ日常生活の中でやっていただきたいですね。

━━私、背中やお腹の緊張が強すぎて腹式呼吸ができていないと言われたことがあるのですが、先生の周りにもそういう人はいますか。

いますね。何年か前にスポーツ選手やJリーグの方からも「緊張がどうも取れなくて」と相談を受けたことがありました。そういうときは肩甲骨からほぐしていくんです。

1ヶ月ぐらいすると、だんだん全身がほぐれてきて4・4・8呼吸法で回復できたという例もありました。

緊張したときや寝る前に4・4・8呼吸法!鼻呼吸がポイント

━━改めて4・4・8呼吸法を教えていただけますでしょうか。

はい。座っていても立っていても良いです。肩の力を抜いて、はじめに息を吐き切ります。そこから4秒かけて息を吸って、4秒息を止めて、8秒かけて吐く。このループを繰り返していきます。

━━吸うときは鼻で吸うんですか。

吸うのも吐くのも、両方鼻でいけると良いです。吐きにくい場合や鼻で息を吸いにくい場合は、口に置き換えてもいいです。

━━鼻呼吸がいいのには、何か理由があるんですか。

鼻の方が、雑菌の侵入を防ぐことができますよね。また、空気が鼻を通過するときに、それが刺激となって一酸化窒素が分泌されて血流が良くなりやすいという理由もあります。

━━4・4・8呼吸法は1日の中でどのタイミングにやったらいいですか。

一番役立つのは、日中のちょっと緊張した場面ですね。あとは寝る前。すっと眠りに入りやすくなります。

現代人は日中にストレスがかかることが多いので、デスクワーク中に定期的に4・4・8呼吸法をすると、全体の自律神経のバランスが整って、夜の睡眠にもつながると思うんです。

血管を緩める時間を長くするには「良い睡眠の確保」がカギ

━━では、毛細血管トレーニングの2つ目はなんでしょうか。

血管を緩める時間を継続することですね。副交感神経が高めの時間をまとめて取るということが非常に重要です。つまり、睡眠の時間ですね。

睡眠中に副交感神経をしっかり働かせると、体も毛細血管も回復させてくれるわけです。

━━睡眠はやっぱり血管のためにもいいんですね。

めちゃくちゃいいと思います。

━━ 一定の時間っていうのはどれくらいですか。

いろいろな研究があるんですが、どれにも当てはまるのが「7時間」ですね。睡眠時間が6時間だと短すぎますし、反対に8時間以上になってくるとサーカディアンリズム(生物に備わっている体内時計)が乱れる可能性があります。

もちろん、年齢にもよります。高校生やもっと若い場合は、睡眠中に成長のための時間を取らないといけないので、より長い睡眠時間が必要です。

スマホのブルーライトに注意!寝る前の環境を整えるのも大切

━━「寝る前にあまりスマホを見ないように」って言われますよね。

そうですね。寝る前にスマホを見ると、メラトニンという睡眠を深くするホルモンがブルーライトによってぐっと減ってしまいます。光に対するメラトニンの感受性が非常に強いというのは、僕らハーバードの研究でもわかっていることです。

夜お風呂に入って寝るまでは間接照明にしたり、スマホの使用頻度を減らしたりするなどの工夫をすると、夜間の覚醒や睡眠が浅くなることを防げる可能性もあります。

━━良い血管のためにも、寝る前から環境を整えて、良い睡眠を7時間とることが大事ということですね。

そうですね。日中の交感神経の暴走を防いで、副交感神経を上げる意識をすることで全体のバランスを整えることが必要です。

━━毛細血管を復活させるためにも、そこは心がけたいなと思いますね。次回は腎臓力をアップさせる腎トレウォーキングについてお伺いします。

(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)


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