日本のアンチエイジング医学の第一人者・満尾正先生に、健康診断の数値の見方を教えてもらう本シリーズ。前々回の肝機能編、前回のコレステロール編に続き、今回のテーマは「攻めの健康診断」。病気を探すためではなく病気を予防するために、健康診断のどの数値に注目すれば良いのか、追加でどんな検査を受けたら良いのか━━。日本テレビホールディングス・古市幸子が詳しく話を伺った。
<満尾正さんプロフィール>
満尾クリニック院長。ハーバード大学で栄養学を習得した日本のアンチエイジング医学の第一人者。1982年、北海道大学医学部卒業。内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、キレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを2002年赤坂に開設、2005年広尾に移転、現在に至る。著書に「食べる投資」アチーブメント社など多数。
病気探しではなく病気予防のための検査を!まずはビタミンD

━━病気探しの健康診断だけではなくて、病気になる前のチェックを自分でできるようになったらいいなと思うんですが。
すばらしいですね。今ある健康診断は「病気探し」が目的で、これは絶対に必要なものです。そのうえで、病気にならない良いコンディションを作るためにどんな情報が必要か知る。そういう検査が必要です。
━━検査ではどういった項目を調べるべきでしょうか。
一番知っていただきたいのが、日本人の8割が不足している「ビタミンD」のレベルです。通常の人間ドックでは、ビタミンDは調べません。特に、普段紫外線を避けている人や魚を食べない人はビタミンDが不足しています。

ビタミンDが不足すると免疫疾患の原因になり、あまり良いコンディションとはいえません。また、カルシウムをいくら摂ってもビタミンDが少ないと十分に吸収されませんから、体調不良の原因になると思います。

━━ビタミンDは、いわゆる血液検査でわかるんでしょうか。
もちろんです。
年齢に関係なく現代人に不足しがちな「亜鉛」も要チェック

━━攻めのコンディションと考えると、ビタミンDのほかにどんな項目を調べるべきでしょうか。
ビタミンDの次に現代人に足りていないと言われているのが「亜鉛」なんですね。若い人の亜鉛不足って昔はあまり言われていなかったんですが、最近では当院の外来でも30〜40代で亜鉛が少なめの方が多くいらっしゃいます。

当院の外来データで見ると、70歳を超えてくると男性・女性ともに血中の亜鉛レベルが要注意の80μg/dLを下回ってきます。
━━高齢の方も若い方も亜鉛不足になっているということですか。
はい、そうですね。現代人の食生活の偏りが原因かもしれないんですけども、詳しいことはわかりません。

━━亜鉛不足というと、食事でどんなものに気を付けたほうが良いですか。
牡蠣を食べると良いのですが、毎日食べ続けるのは難しいですよね。そのほかの手段として、医薬品やサプリメントでも亜鉛を補充することは可能です。
検査は保険適用になる場合も!亜鉛は皮膚科がおすすめ

━━ビタミンDと亜鉛に関して、自分が住んでいる場所で簡単に調べることができるんでしょうか。
ビタミンDに関して言うと、高齢の方であれば「骨粗鬆症疑い」として保険の範囲で調べてもらうことが可能です。保険が効かない場合は、今であれば3,000〜4,000円ぐらいで見てもらえると思います。

亜鉛に関しても、「亜鉛欠乏症」ということで保険の適用が受けられるようになっています。これは皮膚科の先生が詳しいので、調べてもらうとよいと思います。

━━亜鉛不足は皮膚科の先生が詳しいんですか。
亜鉛が不足すると皮膚症状として現れるので、皮膚科の先生は亜鉛について大変詳しい人が多いです。皮膚に塗るクリームにも、昔から亜鉛が入っています。
━━ビタミンDにはどれくらいの基準値が設けられているんでしょうか。
ビタミンDは、20ng/mL未満だと欠乏で、最低でも30ng/mL以上を維持しましょうというのが世界水準です。

━━検査の頻度も気になるんですが、一回調べればいいというものではないんでしょうか。
最低でも年に一回調べておけば問題ないと思います。
━━もし、検査でビタミンD不足や亜鉛不足が明らかになった場合にどんな食事を取り入れたらいいのかは、下記の記事を参考にしていただければと思います。
■【人生が変わる!栄養新常識②】ビタミンDの大切さ
■【人生が変わる!栄養新常識③】亜鉛不足がヤバい!
女性に多い貧血のリスクは「フェリチン」の値でわかる

━━女性は貧血の方が多いと思いますが、一般的な健康診断で貧血のリスクはわかるんでしょうか。
一般的には「ヘモグロビン」「血色素量」という項目があります。これはどんな検診でも必ず入ってます。基準値は11.5以上や12以上となっていますが、性別で違います。
そもそも基準値というのは、健康な人を数千人集めて測定したデータを統計処理したものなんですね。閉経前の女性は貧血気味の人が多いので、基準値が男性よりも低くなっています。

一番大事なものは、鉄の貯蔵タンパクである「フェリチン」です。鉄の働きは人間にとってものすごく重要で、たとえば筋肉には鉄分を含んだタンパク質「ミオグロビン」がありますし、細胞のエネルギーを作る「ミトコンドリア」にも鉄がなくてはなりません。

そして鉄には、さまざまな働きをする「機能鉄」というものがあり、その機能鉄が足りているかどうかの指標が「フェリチン」です。残念ながら閉経前の女性のほとんどが鉄不足です。今朝来院された患者さんもフェリチンが0でした。

━━数値が0ってあるんですか。
あります。こういう方には偏頭痛、朝起きられない、体が冷えるなどの典型的な症状があります。外来で患者さんから「私は主人から怠け者だと怒られます。朝起きられないんです」と、悲しい話を聞くこともありますね。
でもよく調べると鉄欠乏が原因で、「よくこの数値で頑張ってましたね」という方もときどきいます。
血液検査項目にある「MCV」も貧血リスクを知る指標に

フェリチンの数値がわからない場合は、血液検査項目のなかに、赤血球の平均体積を示す「MCV」という項目が出てきます。このMCVの数値が少なくとも90ぐらいあればいいんですが、今朝見えたフェリチン0の方は77しかありませんでした。

━━77といったら、結構ありそうな気がするんですが。
いや、全然だめです。鉄が足りない「小球性貧血」ですね。最低でも85、できれば95ぐらいないといけません。

━━数値が低い場合はいわゆる「隠れ鉄欠乏」ですね。
おっしゃるとおりです。鉄が足りないときにすぐ倒れるなら欠乏状態だとすぐわかるんですが、実際の人間の体は、徐々に鉄が減ってくると順応してきます。「昨日よりちょっと今日は元気がないな」ぐらいで、そのままどんどん鉄が足りなくなってしまうんですね。
閉経前の女性は毎月血液を失うので、鉄の補充が大事になると考えてください。
━━MCVの数値が低い場合はやっぱり検査を受けた方がいいでしょうか。
絶対受けていただきたいですね。

━━検査代はどれくらいかかるんでしょうか。
自費診療ですからそれぞれのドクターの判断になるんですが、2,000〜3,000円程度でわかると思います。
アスリート界で注目される「総蛋白」も自主的に調べてみよう

━━さて、杉田先生からメッセージをいただいております。「アスリート界では近年、血液検査の総蛋白(そうたんぱく)を重要視しています。ハイパフォーマンスには欠かせないと考えられている数値です。一般の方のライフパフォーマンスにとっても注目すべき項目ではないでしょうか?」。
おっしゃるとおりですね。総蛋白(TP)は、血液中に含まれるすべてのタンパク質の総量を示す値で、タンパクが足りているかどうか一目瞭然で判断できる項目です。

ただ、健康診断に含まれていない場合もあります。検査には1,000円もかからないと思いますので、自主的に受けていただくことをおすすめします。
総蛋白が少ない=栄養状態が悪い!アルブミンの数値にも注目

━━総蛋白が少ない場合、どういったリスクがあるんでしょうか。
ひとことでいうと「栄養状態が悪い」ということになります。栄養状態が悪い理由としては、無理なダイエットをしたり、食べられない環境があったりなどが考えられます。ほかには体の中に悪いものが潜んでいる可能性もありますね。たとえば、がん細胞は体を蝕んでいく病気でもあるので。

━━それって大変じゃないですか。
そうなんです。がん患者さんの余命を計算するときには、必ずこの総蛋白の値を使います。またはアルブミンの値を使うこともあります。

━━アルブミンも健康診断に入っているんですか。
通常は、総蛋白を見ればアルブミンの値も出てきます。アルブミンは、栄養素を運んだり水分を運んだりするとても大事なタンパクで、総蛋白のうちの6割ぐらいを占めています。
━━そう考えると、このあたりの数値は全部相関しているんですね。次回は「健康診断の素朴なギモン」と題して先生に回答していただきます。
(『コンディショニングイノベーションLab公式』より抜粋・再構成)
『コンディショニングイノベーションLab公式』は日本テレビホールディングスのウェルネス情報シンクタンク、コンディショニングイノベーションLAB(CIL)公式YouTubeチャンネルです。「健康を、正しく、わかりやすく」をテーマに、最新のウェルネス情報からベーシックな基礎知識までエビデンスに基づいた情報をお届け。日々を健やかに、人生を楽しむお手伝いをいたします。



